授業と子ども・教師2
「校務主任制度」の発足と、その後の役割は。
O 発足4年を経ても「職務内容が不明確」だった「校務主任制度」
「愛知県独特のものと言われる校務主任制度は、発足以来。既に4か年を経過してきて
いる。ところが、現実の問題として、『職務内容の不明確』を訴える声が意外に多い。」
これは、昭和47年7月に発行された『校務主任の職務』(愛知県科学教育センター)
の「まえがき」にある愛知県科学教育センター所長であった宮田力松氏の言葉です。
O 職務内容よりも「給与上の改善策」として設けられた「校務主任制度」
1968年(昭和43年)度、公立小・中学校に正式に校務主任が設けられました。「
正式に」というのは、
「県の教職員給与の改善策として『校長、教頭および教務主任等に対する特別昇給実施
』の適用範囲の中に、新しく校務主任を該当させた」からであるといいます。
そして、
「設立時点における校務主任の職務内容の口達が成されたか否かについては判然としな
い」「職務内容の吟味よりも、給与上の改善策がや々先行し過ぎたために『職務不明確
』の声が派生的に起きてきた」
と述べています。
つまり、職務上必要であるということではなく、そんな論議(吟味)よりも、「給与上
の改善」を先行させた結果が「校務」の設置であったというのです。さらに、「職務内容
の口達」が成されたかもわからないと。そして、
「何よりも大切なことは、既にスタートされ、しかも、他県に見られないこの制度を自
校の組織体制の中に生かすという経営観の確立」を叫んでいます。意義も、必要もなかっ
た「校務主任制度」ができてしまったからには、後は「経営観の確立」を強弁するしかな
いというかのように。
※引用は『校務主任の職務』(研究報告第98号)愛知県科学教育センター発行
O 授業をほとんど持たず、担任を外れ「管理職予備軍」として機能
愛知県にしかないという「校務主任制度」は、その後、どのように機能してきたでしょ
うか。
「校務主任制度」の発足により、「市町村管理規則の一部が改訂され」ました。「学校
に校務主任をおくことができる」とし、「校長の意見を聞いて」「校長の監督を受け校務
をつかさどる」とされたのです。「選考条件」は、「教員経験年数15年以上、年令35
才以上、教員免許小・中1級免どちらかを所有」であったといいます。
当初より 「担任業務と校務主任としての業務ら両立の困難」(小学校−平均40%)
「職務内容の不明確」(中学校−平均41%)
が訴えられていたという「校務主任制度」は、現在、
|
市 名 |
授業担当時数 教務 校務 |
備 考 |
|
|
岡崎市 |
3.97 |
7.18 |
83%の学校で担任外れる。校務補佐、教科指導員も設置。 |
||
安城市 |
5.25 |
9.2 |
94%の学校で担任を外れる。 |
||
西尾市 |
6.6 |
15 |
92%の学校で担任を外れる。 |
||
幸田町 |
10.85 |
12 |
71%の学校で担任を外れる。 |
校長の意を受け、それを率先実行する、忠実な「部下」となる道を歩んでいます。それは
「子どもから離れ」「授業をほとんど負担せず」「担任を外れ」て、「管理職」として機
能していこうとする道です。
県が教職員の配置を定めた基準である「教職員定数配当基準」では、(年度により基準
の変更がありますが、「平成7年度小学校教員定数配当基準表」による)
児童数800人余、25学級(うち特殊1学級)の場合
|
学級数 |
校長 |
教 諭 定 数 |
養護 |
教員計 |
|
||
学級対応分 |
専科 |
計 |
||||||
25 |
1 |
29 |
0 |
29 |
1 |
31 |
表のように配置するとされています。それが、職場に配置されると、
【授業週担当時間数】−岡崎6役合計21時間。他県では93時間。
役職 |
校長 |
教頭 |
教務 |
校務 |
校務補佐 |
教科指導員 |
組合 |
担任 |
O市 A市 |
0 0 |
0 2 |
4 5 |
3 7 |
6 / |
8 / |
0 / |
30 29 |
役職 |
校長 |
教頭 |
教務 |
専科 |
専科 |
担任 |
担任 |
担任 |
他県 |
0 |
0 |
24 (音楽専科) |
20 (音楽専科) |
24 (理科専科) |
25 |
25 |
25 |
O 人事が出世競争の場に、そして、学閥人事が教育現場に問題を生じさせる
O市の校務主任に占める愛教大出身者は80%でした。その数値を保持するかのように
人事は行われているようです。「庭師」と言われ、また「学閥人事」の最初の関門と言わ
れる「校務主任制度」。他方、本来校務を司る校長はどんな仕事をしているのでしょう。
上の表から、すぐわかるのは、O市には、「校務」「校務補佐」「教科指導員」など「役
職が多」く、これらの「役職」の教師たちは、この学校の場合4人あわせて21時間しか
授業を持っていないということです。
それにくらべて、他県の学校の場合は、校長・教頭以外は、教務しかないということで
す。それも、「職場で互選もしくは、推薦ということで時間数も24時間と担任なみ」に
なっています。そして、これらの先生たちの受け持つ時間数は計118時間となります。
これは、すぐ次の表のように、学級担任の授業時間数に関係してきます。
本来、専科教員のわくが、「役職教師」に「食われて」おり、担任は、ほとんどの教科
を担当し、「あき時間」が確保されず、多忙を極めているのです。
O 「役職教師は徐々に管理的に、そして担任疲れる」状況に。
「毎晩12時すぎまでノートをみたり、通信を書いたりしている。睡眠が足らないと、
子どもが良いことをしても『ああ、よくやったね。』とほめる余裕がなくなる。通知票書
き、成績処理、研究紀要の原稿、論文など、家で遅くまでやることが多い。」と、ある先
生は語ってくれました。また、担任を外れ、授業を少ししか持たない教師は、つとに「子
どもから意識が離れ、管理的になっていく」という指摘もあります。
O 「役職教師」を減らして専科教員を適正に配置し、「授業時数」の改善を!
校長、教頭以下、「教務・校務・校務補佐・指導員」等の「役職増設」は、愛知、それ
もこの岡崎など三河の特殊な事態となっています。「役職を増設」し、教師をしばり「出
世」意識をもたせ、子どもと離れたところで、「論文」「研究」「行事」に奔走させる。
「行事盛んで子ども疲れる。」「『研究』発表の日子ども忘れて教師踊る。」という事態
が演出させられているのです。また、これらの役職教師に「教育本来の行事や活動とは思
えない仕事」が課せられ、多忙化に拍車をかける状況もあります。
30代から40代は、教師としても一番「あぶらののった」時期です。その時期に、担
任をはずれ、授業を持たず、結果として子どもたちから離れる。それは、また、教育現場
が難しくなっている今、現場の第一線から経験ある教師を引き揚げることであり、教育問
題の解決能力を奪うことになってはいないでしょうか。また、子どもたちに豊かな教育を
保障するという点からみても、父母の期待にも反していることだと考えます。
三河教職員労働組合は、次のことを要求しています。
O 無駄な役職をなくすこと−すぐにでも校務・校務補佐・教科指導員をなくすこと。
O 教頭0時間をなくすこと。教務も相当の授業時数を持つこと。
O 専科教員の適正配置を−学級数に見合った専科教員の配置を行うこと。