「二学期制」を考える

はじめに
 最近、急に教育現場を騒がせているのが「二学期制」問題です。それも、「○○市では、急に二学期制の話がでた。」「○○市では、教育長が突然言い出した。」などというように、です。この三河でも事態は全く同じです。「急に降って湧いた話」となっています。

二学期制とは
 そもそも、この「二学期制」ですが、現場では全く理解されていないのが実態です。「文部科学省が、どこかの県に研究指定をやらせているようだ。」くらいです。そして、この「二学期制」は、今の教育問題とされる低学力や多忙を解決する特効薬のように言いふらされているようですが、そもそも文部科学省指定の「研究発表会」なるものは、「成果」を作り上げ、それを発表会というセレモニーで演出し、あたかも「研究した成果があった」と宣伝する舞台となっているものです。しかし、「研究発表」の実態は、華々しく宣伝されるアドバルーンとは裏腹に、「研究指定のせいで、学校が荒れた。」「子どもらは、研究のおかげでその教科が嫌いになった。」というように、厳しい実態があります。
 「二学期制」は、特効薬どころか、現在の教育問題を解決する何らの具体策も持ち合わせていないのが実際といえるのです。では、見ていきましょう。

豊田市長   鈴木公平様
豊田市教育長 吉田允昭様               
豊田市教育員各位
                                三河教職員労働組合
                                  執行委員長 畦地 治

     2004年度からの2学期制導入に中止の申し入れ
 
 豊田市では、2004年度2学期制の導入がされようとしています。この問題は、2003年6月に、豊田市教育長が突然「2学期制を2004年度に導入する」と公表したことから始まりました。しかし、先に発表したばかりの「豊田市教育行政計画」にすら示されていない、極めて性急な発表でした。(市教委は「行政計画にはのっている」と言っていますが、広報等には載っていません)

 その後、10月広報「とよた」へ実施案の掲載、10月2日〜18日中学校区での説明会実施、10〜11月中旬パブリックコメント受付を経て、11月27日の教育委員会議で実施案を決定しようとしています。
 しかし、市教委が説明している2学期制のメリットは、保護者・教師には納得が得られるものではありません。まして、ほとんど情報も得られない一般市民にとって受け入れることができるものではありません。
 例えば、8月の三河教労との交渉時に豊田市教委が例にあげた仙台市ですが、仙台市教職員組合の調査によりますと@教育現場にゆとりがないA学習の継続性に逆効果などと、市教委がメリットとしている効果とは逆の結果が出ています。香川県丸亀市の市教委のアンケートでは「2学期制に期待している保護者は36.7%にとどまった」となっています。

 また、市教委が行った保護者アンケートでも、少人数学級の実施については大多数の人が「賛成」と言っているのに対して、2学期制については「よくわからない」と回答している人が多数います。
 これらのことを考えれば、性急に2学期制導入に踏み切るのは妥当ではないと考えます。
 さらに、2学期制導入の根拠としている時間数の増加は、数字のごまかしがあり、2学期制によって増加するものではありません。その他の根拠についても2学期制だからできるという説明にはなっていません。
 そして、何よりも、教育現場の意見や保護者の意見を無視した形で進められようとしているところが最大の問題です。しかも、中学校区での説明だけで、これから入学する子の保護者や広く市民の意見を聞こうとする手続きすら踏んでいません。また、教育現場で指導にあたる教職員への説明、意見交換はまったくされていません。
 こうした一方的な進め方は、教育には相容れないものです。いみじくも三河地区のある市教委は「2学期制については検討は始めました。今は教職員、保護者の方の意見をうかがっている段階です。豊田市のようにトップダウン方式では進めません」とはっきり言われました。

 そこで、緊急に、2学期制導入に関して話し合いの場を設定すること、保護者・教師・市民の意見を十分に反映すること、当面2004年度からの2学期制の実施は行わないことを申し入れます。

                        記

・11月27日の教育委員会議以前の早い時期に話し合いの場を設定すること。

・豊田市が2学期制導入のモデルとした仙台市における仙台市教職員組合のアンケート結果や、丸亀市教育委員会のおこなったアンケート結果をどのようにみているのか回答すること

・当面2学期制の2004年度導入を見合わせること。

以上






三河教労、豊田市における
  「二学期制」の突然の導入に対する申し入れを行う!

教育長の「突然の表明」で、   強行されようとしている「二学期制」

豊田市においては、それまで市の教育目標にもなく、全く論議もされてこなかった二学期制が、教育長の突然の表明で、急に浮上し、アリバイ作りのように仙台の文部科学省指定の「研究」校視察も行われて、強行されようとしています。

「二学期制の利」とされるものは、虚像
 
 二学期制のメリットとして、いくつか挙げられています。「授業時間が増える」「子どもと触れ合う余裕が生まれる」などなど。しかし、これは「絵に描いた餅」でしかありません。

 「子どもに余裕が生まれる」として、週5日制が今年から始まりました。その実態は、「入学早々の1年生でも、早くから1日5〜6時間も。」「週5日に以前の6日分が凝縮された。」「土・日も、部活が行われている。」というような実態です。そして、「短縮期間」がなくなり、教員は成績付けを深夜・自宅で行うことが更に増えました。また、細かくなった成績評価のために、教員の多忙はさらにひどくなり、子どもらと接する余裕もなくなりました。
 「5日制のために、行事は削減し、授業時間を増やす。」ために、年間を通じた豊かな学習体験は減らされ、「家庭訪問は、夏休みに行う」「訪問は、玄関を見るだけ」など、何のために行うのかという家庭訪問になっています。訪問日数も減らされ、ゆっくり話し合う時間も確保できないのです。
 このように、授業時数を理由にする改変は、教育現場にゆとりをなくし、教育目標そのものさえ疑問視する「行事」となって現われているのです。

そもそも現在の教育における問題点とは

 そもそも今、問題となっている「教育の課題」とは、何でしょう。

1,「低学力問題」と余裕のなさ、教育現場の多忙は、30人学級など、教育条件の改善に手をつけてこなかった文部科学省に責任があると考えます。

 1学級40人というような劣悪な教育条件の中でも、教職員は自らの健康をこわしながらも取り組んできました。「1週間あたり、時間外の仕事が10時間以上」「深夜まで通知票書きをした。」「指導案のために、徹夜をした。」「学芸会の準備で、睡眠2〜3時間だ。」このようなことが、日々起きているのが、教員の実態です。
 「休もうと思っても、そのために準備をしなくてはならない。」「「休んだら、休んだで、その後が大変だ。プリントの○付けがいっぱい。」などということも、ざらです。 
 このような状態を、常態化してきたことに責任があるのです。
 30人学級の実現を国の責任で行うこと。これが、教育行政が行う最も重要な教育改革の緊急課題です。


2,教育の「成果」として、「部活の成績」「対外試合の成績」「研究発表の派手さ」「論文入選」や「行事をセレモニー化」し、競い合ってきたという誤ったイベント的発想に問題があります。
 「各種大会や進学競争での栄光」などという虚構の成果を追い求めるのではなく、本来の地道な教育活動をねばり強く取り組み、教育の実を挙げること、これが教育現場に求められていることです。
 「成果の追及」は、時として「成果主義」となり、教育関係者の頭を狂わせてきました。それは、子どものためといいながら、その実は「教育現場の勝ち組」という教育委員会関係者や校長らの立身出世のためにありました。
 そうではなく、「教育現場の現場の第一線」である担任教員や養護教諭、子どもらの姿を見つめ、より良い教育活動が行えるような条件整備を行うことです。
 それは、「制度をいじる」ことでもなく、教育活動本来の営みを尊重することです。本来の教育活動を重視して、無駄とも思える「活動」を削減すること。
 1,30人学級の実現
 2,担任の授業時数の制限
 3,成績処理事務の簡略化
 4,「部活」の制限、小学校における「部活」の検討
 5,応募・対外作品提出の制限
 6,年間行事の見直し
 7,「研究指定」の停止
 その他
 など、「30人学級」が実現すれば、可能性は飛躍的に増すでしょう。

   
 (続く)
 

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