不服申立書

 

2003年5月28日

 

愛知県人事委員会委員長 殿

 

不服申立人

 

 

 処分を受けた者の氏名       ( 略 )

 

住所       ( 略 )

(電話  略  )

        現在の職    ( 略 )

 

所属        ( 略 )

(電話    略    )

 

 処分を受けた当時の職     ( 略 )

所属     ( 略 )

 

 処分を行った者        愛知県教育委員会

 処分の内容          ( 略 )

 

 

 処分を受けた年月日      2003年4月1日

 

 処分説明書の交付を受けた年月日

                2003年4月24日

 

 処分に対する不服の理由    別紙のとおり

 

 口頭審理を請求するかどうか  公開による口頭審理を請求する(口頭審理は申立人の職場のある東加茂郡内又は隣接地域で開催されたい)

 

 添付書類           


不服申立の趣旨

 

  処分者が、不服申立人に対して2003年4月1日付でなした転任処分は取り消す

 との判定を求める。

 

 

不服申立の理由

 

 処分者は、2003年4月1日、不服申立人に対し、従前の勤務校であった下山村立和合小学校から足助町立大蔵小学校への転任処分を発令した。

 この処分は、下記のように不服申立人の意に反する不利益な処分であり、かつ違法・不当な処分である。

 

 

1 本件転任処分に至る経緯

  不服申し立て人は、1973年4月に愛知県に養護教諭として採用され、下記の勤務校を歴任した。

従来の勤務校(年度)        ( 略 )

 

この間、転任希望を出したのは1975年の額田町立鳥川小学校と2000年の大沼小学校の時だけであり、東加茂郡では基本的に「異動に際して教職員の希望を聞く」というシステムが採られてこなかった。また、大沼小学校から和合小学校への異動に際しては、異動希望を出した申立人に対して、申立人と入れ替わるように異動させられた養護教諭は和合小に2年しか勤めておらず、異動希望を出した申立人に対する「あてつけのような人事」であり、基本的に「異動希望を出すことに対する嫌悪感」が人事担当者に存在したと考えざるを得ない。

 

本件処分の内示   

2003年3月20日に申立人に対して内示が行われた。異動希望調査票は行われなかった。前年の2002年12月初旬に校長室で個別面接があり、申立人は口頭で「閉校まで勤めたい」と校長に伝えたのみであった。

 

内示に関する交渉の経過

今回の内示以降の経過は、下記の通りである。

3月20日(金)内示

24日(月)申立人、杉本校長と下山村教育委員会教育長に申し入れ

    25日(火)申立人、校長と足助支所へ申し入れ

                (加藤主査、高山主事が対応)

申立人、教育事務所足助支所へ申し入れ(高山主事が対応)

県人事委員会へ「措置要求書」提出、県教育委員会へ申し入れ

    26日(水)豊田・加茂事務所へ申し入れ

足助支所・足助町教委へ「申入書」提出

          申立人、下山村教委へ「申入書」提出

                 (下山村水野教育長、「内申はせず」と答える。)

    27日(木)足助町教委へ

          (教育長と話し合う。「(異動の)内申はあった」と語る。)

    28日(金)足助支所へ、川合事務協議会会長「白紙撤回はしない」と回答

 

2 通勤・通院上の不利益

(1)通勤上の不利益

  申立人の自宅から和合小学校までは、約2.4qで所要時間は10分弱であったが、大蔵小学校までは約25.6qで所要時間は40分となった。

  申立人が東加茂郡に来てから、もっとも勤務時間がかかったのが大見小学校に在職中の25分であった。今回の転勤によって通勤時間は前任校の和合小学校の4倍、距離にして10倍となった。今回の異動によって不利益が生じたことは明らかである。

  さらに、山間部における冬の時期の通勤に困難が伴うことは明らかなことである。すなわち東加茂郡教員組合が発行した2001年「教育白書」においても東加茂郡では「公共交通機関を使って通勤している組合員は皆無である。」。それは、「公共交通機関を使って通勤することがほとんどできない地域に学校が位置している場合が多い」からであるという。さらに、「一昨年の調査に比べ、通勤距離で20Km以上、通勤時間で30分以上に相当する組合員が1.2倍と増加している」と指摘している。

  申立人は、今回の異動で、通勤時間は4倍、距離において10倍以上の通勤時間及び距離となった。また、申立人の通勤路は上記「教育白書」の指摘する「見通しが悪くカーブの多い通勤路」であり、「凍結や積雪の多い通勤路」として写真が掲載されている危険な通勤路となったのである。(「教育白書」P1〜P4)

  県の人事異動方針では「異動後の通勤時間は、原則として公共交通機関で片道1時間30分以内とする」とされている。公共交通機関による通勤ができないこの地域においては、教職員が自家用車で通勤せざるを得ないことを前提として、その条件には相当な配慮がなされるべきである。

 

(2)通院上の不利益

   申立人は、15年前からのどの痛みとアレルギー性結膜炎を患っており、10年前より週1〜2回ほど岡崎市内の島田医院(耳鼻科)に、また月に1〜2回程度矢藤医院(眼科医)に、勤務終了後通院している。

  島田医院までの通院に要する時間は、転勤前の和合小学校からは約25qで35分であったが、転勤後の大蔵小学校からは約34qで1時間5分(渋滞時には1時間20分)もかかることとなった。

 島田医院の受付は午後6時30分までなので、5時の勤務終了直後に学校を出ても、渋滞に巻き込まれた時には受付に間に合わないことがある。そして、1時間を超す通院時間のため、体調不良などで通院を翌日にするなど、通院できない日が多くなった。また、矢藤医院の受付は6時までであるので、勤務時間終了後に通院することができなくなった。

このように、本件処分によって申立人には通院することが困難になるという不利益が生じている。申立人が通院している事実は和合小学校の校長はよく認識しており、このような人事が行われたこと自体不当である。

 

3 適正手続違反

憲法は適正な手続を受ける権利を保障しており(13条、31条)、この保障が行政手続にも適用されることは一般に認められている。そして、当事者の意に反する処分を行うにあたっては、当事者の意見を聞く「告知・聴聞の機会」を与えなければならないのである。

そのため、人事異動に関して当事者の意向を尊重する旨を言明する教育委員会も存在するのである。 

例えば、豊橋市教育委員会は、「基本的には、希望をとって、希望に基づいて進めてきている。異動希望がなくても 転勤を求める場合には、事前に校長を通じて本人にお話をしてもらっている。それでうまくいかなければ他の人に当たっている。『異動希望がある人は替える。出す場合は、合意を得る。』ということだ。人事にクレームがつくことがあるが、それは、校長がよく事情を把握してなくてやっているからだ。突然の内示というようなことがあってはいけない。内示の日までわからないということはありえない。それは、校長が知っていても話していないということだと思う。校長に問題がある。」

(2000.2.25三河教労との交渉の席で豊橋市教育委員会言明)

また、岡崎市教育委員会は、「不意の異動は100%ない。教職員の希望が尊重されるように各校長に話をしている。」(三河教労の申し入れに対して岡崎市教委の話)と、述べている。そして、豊田市教育委員会は「希望の尊重・事前の打診・内内示の実施」(豊田市教育長)を明言している。このように、今や、「教職員の希望を尊重すること」は常識となっているのである。

  しかし、本件処分においては、申請人に対する事前の打診は一切なく意見聴取などの機会を与えられていないという適正手続違反があり、また前任校の和合小学校校長ですら内示の日まで異動のことを知らなかったと発言しているなど、今回の人事が違法・不当なものであることは明確である。

 

(1)今回の人事は、愛知県教職員人事異動実施要項の「同一校勤務3年未満の者は、特別の事情のない限り異動の対象としない」に違反する人事である。また、今回の人事は内示当日まで校長も知らなかったというものであり、「平成5年教職員定期人事異動方針について」には、「校長の意見の申し出にあたっては、本人に対して意向確認を行うなどにより、その希望事項が反映されるように配慮願います。」(愛知県教育委員会教育長)とあることにも違反する不当な人事である。

また、「平成15年度教職員定期人事異動方針」にも「市町村教育委員会の内申及び校長の意見を尊重する」とあり、これにも違反する不当な人事である。

  今回の異動は、申立人がたった2年勤務しただけで強行された異動であり、申立人に対して精神的苦痛を与えるものであった。たった2年での転勤ということは、何か落ち度があったのかと考えさせるものであり、2年間の申立人の取り組みに対する不当な評価を感じざるをえない人事であり、到底認めることはできない。

 

(2)教育事務所足助支所の加藤主査は杉本校長に対して「申立人が下山から一度も出てないので足助に行ってほしい」と本件異動の理由について説明し、杉本校長は申立人に3月22日その旨を伝えている。しかし、上述したように申立人は、1988年から1991年までの間足助町立大見小学校に勤めている。このように、今回の人事が間違った認識よって行われたことは明らかであり、「広域交流」という理由も崩れており粗雑な人事というべきである。

 

(3)水野下山村教育長は3月24日に「羽布小の子どもらが養護教諭が一緒でないと淋しいから」ということを異動の理由として挙げた。羽布小学校と和合小学校は平成15年4月に和合小学校として統合され(統合された和合小学校を含む4校が平成18年度から統合した新しい学校となり、羽布小学校の跡地に校舎が新設される計画である)。水野教育長の説明は、両校の養護教諭のうち一人を異動させる必要があり、羽布小学校の養護教諭を残すことにしたというものと思われる。

 また、下山村教育長が理由に挙げたように、統合により「廃校になる学校の養護教諭が残る」という形で異動してきたという事例はない。また、羽布小学校の養護教諭は5年間同一校に勤務していたことから、2年間しか和合小学校に勤務していない養護教諭を異動させるのではなく、羽布小学校の養護教諭を異動の対象とする方が県の人事異動要項に照らしても自然なことである。

 

4 教育計画の侵害

   申立人は、「3年後の閉校まで、現任校に勤めたい」という希望を持っていた。そして、現任校には2年間勤めたに過ぎない。また、申立人は和合小の閉校までを考え、子どもらの記録を取っていこうと考え、取り組みを始めたばかりであった。

  申立人は、数年前から「心の健康」の大切さを考え、教育実践を取り組んできた。

 平成13年度は、全校で全員2回の健康相談をした。その中で、クラス仲間になれない子どもの相談にのり、対応してきた。

 平成14年度には、全校全員1回の健康相談を行い、全員に「心のおそうじ」という心をすっきりさせるひとつの手だてを行った。その中で、気になる子どもらへの対応を行った。申立人は「心のおそうじ」を平成18年3月の閉校まで継続し、見守っていきたいと考え、記録を集め始めていた。

 申立人は地域の活動にも積極的に参加した。学区のPTA活動においてはボランティアということのため代休等はなかったが、これらにも進んで参加し地域の教育活動に寄与しようと考え、取り組んだ。

 今回の人事は、これらを全く考慮しない一方的なものであり、教師の教育権を著しく侵害するものであり、これを認めることはできない。

 

 

5 結論

  以上の通り、不服申立人は、処分者の違法・不当な転任処分により、多くの点において不利益を被っており、本件転任処分は取消を免れないというべきである。




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