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平成15年不第1号

不服申立人  川合仁美

処分者  愛知県教育委員会

 

準備書面(1)

 

平成15年10月10日  

愛知県人事委員会委員長 殿

不服申立人  川合仁美

上記代理人  樽井直樹

ほか 66名

 

第1 本件について愛知県人事委員会は公開口頭審理を開くべきである

   処分者は、答弁書において本案前の答弁として本件不服申立について却下の判定を求めた。申立人は、反論書において、規則等も引用し、本件について、愛知県人事委員会が受理の決定をしていることを指摘し、却下を求めることが主張自体失当であることを指摘した。

   処分者は、準備書面において、この点について何らの反論を行っていない。

   貴委員会におかれては、本件不服申立についてすみやかに公開口頭審理を開催するように手続を進められることを要望する。

 

第2 特別事情=統廃合について

   処分者が作成した「平成15年度教職員定期人事異動実施要領」の「小中学校関係 2教員人事」の項(1)転任Bには「同一校勤務3年未満のものは、特別の事情がない限り異動の対象としない」と規定されている。

   本件で、申立人は和合小学校に2年間しか勤務していない。

 

   処分者の、答弁書及び準備書面での主張において、この「特別事情」に該当するのは、和合小学校と羽布小学校の統合という事情しかない。

この点について申立人は、反論書において、東加茂郡における1987年(昭和62年)からの統合例7例について調査し、それらの統合例において、処分者が本件において主張するような「両学区の児童の指導面・心理面」に配慮するようなことが行われてこなかったことを指摘した。

しかるに、処分者は「それぞれ種々の事情があり、一概に論じ得るものではなく」「少なくとも、本件転任処分にあたっては、答弁書において主張した事情が存在」と強弁するのみで、なんら具体的な反論を行っていない。そして、「不服申立人の主張は偏見に満ちたもの」と悪罵に近い言葉を投げかけるのみである。

このような姿勢は、厳しく糾されなくてはならないことを指摘しておく。

 

第3 通勤上の不利益について

 1 「準備書面」には、「それぞれの地域の交通事情によっては、自家用車に頼らざるを得ない地域もあり、東加茂郡の場合、その事情を考慮し、東加茂地方教育事務協議会においては、平成15年度教職員定期人事異動実施要領を策定し」たとし、「異動時の配慮事由としては、『原則として、片道1時間30分となるよう配慮する』と規定し」たと述べている。

   これが、事実とするなら重大である。上記愛知県の教職員定期人事異動実施要領「小中学校関係 2教員人事」の項(1)転任Fには、「異動後の通勤時間は、原則として公共交通機関で片道1時間30分以内となるよう配慮する」とあるのであり、勝手に「公共の交通機関」の要件を外したのである。しかも、山間部であるが故、処分者もその「答弁書」で「冬の時期、通勤に困難を伴うことはほとんど全ての教職員に当てはまる」(「答弁書」P4)と事情を認識しているのである。しかるに、処分者は事情を考慮せず、かえって通勤事情を悪化させる内容を「平成15年度教職員定期人事異動実施要領」で定め、実施したというのである。そして、この実施要領は、その存在自体が教職員に知らされていないものである。

   申立人は、処分者に対し、処分者が準備書面中に引用している東加茂地方教育事務協議会における平成15年度教職員定期人事異動実施要領を開示することを求めるものである。

   また、処分者の主張は、東加茂郡では公共交通機関で通うのが困難だから県の教職員定期人事異動実施要領の文面から単に「公共の交通機関」の要件を削除したというものであって、安易極まりない姿勢である。「公共交通機関で通うのが困難」な地域で、自家用車を利用した通勤を前提視するのであれば、通勤上の不利益を配慮して1時間30分より短い時間を設定する必要があるはずである。にもかかわらず、単に「公共の交通機関による」という要件を削除し「片道1時間30分以内となるように配慮する」と規定する東加茂郡における教職員定期人事異動実施要領の内容は合理性がないのである。

 

 2 通勤手当について 

   処分者は「準備書面」にて、「種々の要素によって相違があり(例えば、信号機の少なさ等)、一概に算出できるものではない」と付言しているが、「信号機が少ない」が何を意味するか説明不十分である。山間部であるという事情のため、信号機が少ない代わりに坂やカーブなど燃料を消費する要素も多い。また、タイヤの摩耗や雪道対策のために通勤手当が経費を補填するに十分でないことを改めて指摘しておく。

 

第4 通院事情への配慮

   準備書面にて、処分者は「同校長にあっては、日常会話の中で、不服申立人が通院しているようだと言う程度に知っていたに過ぎず、その具体的な症状・病状、更には通院している病院名等について、不服申立人から話があったわけでもなければ、異動において考慮して欲しい旨の要望もなかった。」としている。

   教職員の異動においては、教職員が抱える生活上の問題を十分考慮すべきであり、校長は学校管理者としても、また人事異動のために具申をする場合にも教職員の健康状態を把握していなくてはならないのである。

   校長は、通院していることは知っていたけれども具体的な事情は知らず、配慮を求めることもなかったとは、明らかな失態である。平成5年度教職員定期人事異動方針には、「このことについて、県教育委員会において、別紙のとおり決定されましたので、遺漏のないようよろしくお取り計らい願います。」とし、「校長の意見の申し出に当たっては、本人に対して意向確認を行うなどにより、その希望事項が反映されるように配慮願います。」とある通りである。通院事情を「特段に配慮する必要がない」とか、「異動において考慮して欲しい旨の要望」を聞くこともせず、「要望がなかった」とは、不謹慎の極みである。

   なお、教職員定期人事異動実施要領は、「小中学校関係 3その他の事項」の項(2)の人事異動の特例において、職員の健康状況の把握と本人希望の留意について規定していることを指摘しておく。

 

 

   

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