準 備 書 面

平成141224

 

愛知県人事委員会委員長 殿

 

不服申立人 小松 康弘

 

 平成14年不第1号事案について、不服申立人は速やかに公開口頭審理を求めます。

 

第1 不服申立人の主張

1、            不服申立理由について

 不服申立人は、不服申立書において、@転任処分の適正手続き違反A申立人の教育計画を無視する教育権侵害B申立人の所属職員団体に対する不利益処分をその理由として申し出た。それに対する処分者側の答弁書及び準備書面では、いずれも争うとの主張がなされている。争うとの主張がされている場合、公開口頭審理の中で、双方の主張をもとに審理することが必要である。

 

2、            人事委員会の対応について

 平成14年不第1号の不服申立に対し、人事委員会側の対応は、不利益の救済機関としてはあるまじき対応であった。不服申立てに対して速やかな審理を進めることが、一番重要なことである。救済を求めている不服申立人は、人事委員会の書面提出の期限を厳守して誠実に対応してきた。ところが、速やかな審査を進める立場にある人事委員会はそれをさぼってきた。処分者側の期限内での書面未提出に対し、電話で請求するなどは、人事委員会の取るべき対応ではなかった。きちんと文書で持って請求すべきものである。不服申立人の抗議によって、本来9月6日に提出されなければならない書面が、3ヶ月近く遅れて、やっと11月29日に提出された。人事委員会が期限を定めて、きちんと対応すれば、もっと早い段階で、愛知県教育委員会の書面が提出されることは明らかである。このような、人事委員会の対応は許されるものではない。その結果、平成15年度の愛知県人事異動方針が提示され、それに伴い、学校長による教職員面談が始まってしまった。平成13年不第2号事案の上坂に対し、「校長面接の際に、係争中の異動はできないと言われた」と校長が述べた。このように、審理が遅れることで15年度の人事異動で申立人の意向を尊重する機会が奪われることもあり得る。

 

第2 処分者の準備書面について

1、            不服申立人の勤務校の変遷と動機

 申立人は、処分者の準備書面 第1処分者の主張 1、不服申立人の教員免許状及び勤務校の変遷について述べられている免許状と勤務校の変遷はそれを認める。

平成8年に、申立人は愛知郡東郷町立諸輪中学校に赴任したが、これは、それまでの申立人の意思のもと、英語教員としての普通免許状取得が発端である。申立人は、平成5年頃から、独学で英語を英会話スクールに学び始めた。英会話スクールで学ぶ一方、アメリカ・オーストラリア・カナダなどへのホームステーを夏期休暇中に行った。その経験を通して、大学できちんと英語を学び、平成6年3月に中学校英語教員の普通免許状を取得した。翌年の7年には、高等学校英語教員の普通免許状をも取得した。

このように、申立人の中学校への異動は、本人の英語教育に対する強い意志と情熱のたまものである。これは、処分者 準備書面 第1 3、本件転任処分の必要性にも述べられている、小中間の連携・交流ではない、本人の教育計画による異動であった。

 

2、            本件転任処分に至る経過について

 処分者の準備書面では、本件転任処分に至る経過の中でD申立人が『「異動は特に希望しないが、もし、移動しなくてはならない場合には、中学校で英語を教えたい。」と述べていた。』としているが、申立人は「異動は希望しない。」とはっきり伝えている。しかし、前任校では、在職年数が長いほうでもあり、異動の可能性も考え「もし、異動しなくてはならない場合には、中学校で英語を教えたい。」と伝えたのである。

 H前任校の加藤校長は、同月15日、上記を受け、「全職員との間で面談を実施した。」と述べている。この面談では、加藤校長は「英語教育におけるティームティーチングの本格的実施を行うために、英語教師は大幅に異動することになった。」「君も異動の対象になった。」と申立人に話した。それを聞いて、申立人は「残る可能性はないのか。」と校長に問い返したところ、「それはない。」「まず決まりだ。」と加藤校長は答えた。その返答を聞いて申立人は「それなら、通える範囲の中学校でお願いしたい。」と申し出たところ、「あなたは苦労して中学校の免許を取ったのだから、それぐらいは当然だな。」と加藤校長は述べた。

その後、3月14日に人事の様子を加藤校長に確認したところ、「小学校だ。」「人事面接の会場に行って書類を見たところ、君が小学校と書いてあったので愕然とした。」「本来ならば、この人事はおかしいと言いたかったが、新米校長なので言えなかった。」「すまない」と申立人に謝罪した。翌日、申立人は、東郷町杉原教育長に内申の確認をしたところ、杉原教育長は、申立人の希望を内申したと答えた。このように、内示が行われるまで、小学校への異動について、一度も話がされなかった。

 

3、            転任処分の必要性に対して

 処分者の準備書面 第1 3、本件処分の必要性等について @の中で「小中学校の勤務経験を有し、更に中学校における英語教育に従事した経験を有することから、小学校における国際理解教育及び英語教育の基盤作りをし、押し進めていくべき推進者として相応しい」としているが、国際理解担当者は、申立人以外に英語の堪能な教師が在職しており、申立人の赴任以前には、彼が国際理解教育の担当者であった。彼は、中学校の経験者でもあり申立人が推進者として相応しいとはいえない。また、勤務校では、総合的な学習の英語の授業では、ALTが指導プランを立案し進めている。その結果、特別に英語教員としての免許を所持する教員が必要なのではない。

長久手町では、正規英語教員が不足し、講師でまかなっている中学校がある。このことをみても、経験を有する英語教員が小学校へ異動させられる必要性の合理的説明はできない。

 Aの中で、小中学校間の人事交流の必要性が強調されているとしている。「小学校で学んだ子どもが中学校でどう成長し変化していくかを見通して教育を行う」ことは必要である。申立人は、既に諸輪小学校から諸輪中学校の9年間を見通して教育を行ってきている。しかしながら、教員の意向を無視して交流を行うことは教員のやる気を奪い、教育の活性化に逆行する。本件転任処分は、申立人の中学校の教育計画を無視し、一方的に小学校への異動を強いたものであった。本地区内では、教員の意向を無視した人事異動が行われ、その結果、職を離れる教員も毎年出ている。教員の意向を無視する、このような人事異動は誤っている。

 Bでは、「極めて適切な人事異動である。」と述べているが、申立人・前任校校長・東郷町教育長の意見・意向に沿わない人事であり、適正に行われていない。そのことは、本準備書面 2、本件転任処分に至る経過について のなかで詳しく述べている。