反 論 書

 

2002年8月7日

 

愛知県人事委員会 殿

 

不服申立人 小松 康弘

 

 

 平成14年不第1号事案について、処分者の答弁書に対し、申立人は次のとおり反論する。

第1 本案前の答弁に対する意見

 1 本案前の答弁について

処分者は、答弁書において、本件不服申立てを却下するようとの判定を求めているが、これは、不服申立の「不受理決定」を求めるものである。

本件では、地方公務員法第49条の2第1項に基づき不服申立てがなされ、人事委員会は、同法50条第1項「第49条の2第1項に規定する不服申立てを受理したときは、人事委員会又は公平委員会は、直ちにその事案を審査しなければならない。」により、この不服申立てを正式に受理している。このことは、本件はすでに審査に入っている段階に至っているのである。

「任命権者の処分が不利益な処分にあたるか否かは、その実体的な審査をした後でなければ判定することができないから、人事委員会の委員長が不利益処分の存しないことがきわめて明白であるという事由で、その専決により却下決定をすることは許されない。(昭30、8、2広島地 行裁例集6−2031)」との凡例もある。したがって、処分者の求める「不受理決定」は法律上不可能であり、処分者の主張は失当である。

 2 本案前の答弁の理由について

 処分者は、本件転任処分が「客観的に見ても、また実際面においても、申立人の勤務場所、勤務時間について、何らの不利益を伴うものではなく、地方公務員法49条第1項に規定する『不利益な処分』には該当しない。」と主張する。

 しかしながら、本件においては、不服申立てにおいて述べた様に、本件処分の手続きは適正になさえず、申立人の教育計画を無視する教育権侵害であり、不当に組合活動を制限する不当労働行為の不利益がある。

第2 答弁書第4 不服申立の理由に対する認否及び反論について

 処分者がエで述べた理由内容には事実に反する処分者の一方的な意見が見られ事実に反する。

1 「校長の意見具申ないし教育長の内申内容につき、申立人の主張に誤りがある」とすることについて

 諸輪中学校の加藤史郎校長は、3月14日、本人の異動についての具申内容の質問に対し、申立人の、「異動は希望しない。異動しなくてはならない場合中学校で英語を教えたい。」との意向に対し、「文書でも口頭でも申し出をしている。」と明言した。また、翌日15日、東郷町杉原教育長は、「希望は校長から聞いている。その意向をきちんと愛日地方教育事務協議会に内申した。」と答えた。この内容に間違いがあるならば、それは、申立人の主張が間違っているのではなく、校長又は教育長の虚偽の説明に問題がある。処分者は、虚偽の説明を受けて転任処分を行ったとすれば、それは明かに手続き違反である。

2 「中学校英語だけが専門と考えるのは誤り」について

小学校の教員免許を持つ教員と中学校の英語免許を持つ教員を同列に見る処分者側の論理は、専門性を理解しないものである。本件申立人は、小学校教員の免許も所持しているが、英語教師の専門性確保の為に、毎週大学に通うなど、研鑽を継続している事実がある。専門性の維持のために申立人が日頃から努力を続ける程、英語の専門性は高いものがある。

 

3 「中学校の教員が小学校に行くことは時代の要請」について

愛知県の人事異動では、小学校中学校間の異動が行われている。しかし、このことが、本件転任人事を合理化する理由にはならない。第1に、時代の要請はどのような所からどのような要請がなされたのか不明である。同じ愛知県内である名古屋市では、定期人事異動は愛知県のように小学校中学校間の交流はほとんど行われていない。時代の要請であるならば、そのような現実はあり得ない。

第2に、本件転任処分のあった愛知地区では、英語の正規教員が足りない実態がある。複数の中学校で講師による英語指導が行われている。この事実は、英語の教師を中学校に異動させることの合理的理由が「時代の要請」ではないことを示している。そうではなく、時代の要請は高い専門性を備えた中学校英語教師を求めているのである。このことは文部科学省が求めているものである。

 

4 「総合的学習、・・・小学校で取り入れられつつあるAETを含む英語学習の推進」について

総合的な学習の国際理解教育としてAETによる英語学習が行われていることは事実である。しかし、その英語学習では、その指導計画・内容は、AETが計画を立案し授業を進めている。AETは日本語も堪能で、英語教師の免許を持つ教師でなくては授業を行えない実態ではない。

このように、処分者側の不服申立の理由に対する認否及び反論には、事実に基づかない意見が合理的理由として述べられている。

 

第3 結論

 以上述べてきたとおり、本件処分の不利益処分該当性はあきらかであり、処分者の求める「却下判定」は合理的理由がない。不利益救済の為に、本件事案に対する口頭審理の速やかな開催決定を求める。

以上