子どもと教職員が元気な学校をめざして


 

  結成宣言    

 

今こそ、子どもも教師も 生き生きと育ち合う教育現場を!

 

 この三河の地に日々教育活動にいそしむ先生方へ 

 私たちは自身の権利を守る何一つの組織を持つこともなく、この何十年を過ごしてきました。そのため、人事に泣くこともあったでしょう。担任希望さえ受け入れてもらえず、悔しい思いをしたこともあったでしょう。遅くまで続く勤務で家庭との両立が難しい、偏った人事による管理、そのために生じる教育現場への疑問と不信のなかで、多くの力ある教師たちが教育現場を去っていきました。また、何十年のベテラン教師があと数年を残して職場を去っていく例が増えています。

 教育現場に残る私たちも、日々多くの疑問を持ちつつ、子どもたちのために教育活動に邁進していますが、ささやかな一つの要求を実現するためにも多くの労力を費やし、それが徒労に終わることも少なくありません。

 
 この「三河の教育」を特徴づけるような深夜にわたる勤務、時間外「勤務」の日常化、
行事や「研究会」による多忙化、「部活」の過熱、生活の細かいところまで規制し子どもと教職員を蝕む管理主義教育の浸透、役職乱造と職員の序列化、学閥支配と管理システムの肥大化は、一部には封建的関係の強制と国家主義教育ともあいまって、職場の状況を堪え難いものにしてはいないでしょうか。
 また、統制された「研究発表」、「統一指導案」
の強制、振興会刊行物の半ば強制の採用、学校訪問や指導員訪問などという方法による職場管理と新学習指導要領の先取り、複合選抜制度による超進学校の設定や業者テストに基づく偏差値教育の積極的実施による子どもの「輪切り」など、職場の状況はさらに悪化しています。それは、現職教職員の病気多発や死亡、子どもにおける登校拒否の異常な増加となって現われています。


 一九九二年四月より、「新学習指導要領」が完全実施されました。低学年からのつめこ
み教育、「日の丸・君が代」強制、東郷平八郎に代表される国家主義教育、疑問の多い「学校五日制」の見切り発車などなど、教育現場の状況は子どもと教師、そして父母の心を更に不安にさせる段階へと進もうとしています。


 そんな中で、私たちは、既存の「組合」と呼ばれるものが、教育委員会、学閥の学校支
配の補助機関化し、教職員が孤立し分断されている現状を前に、ともすると前途への希望を失いかけてきました。

 しかし、私たちは「子どもたちとともに、平和を愛し、子どもたちとともに一生を歩みたい」とする教師です。教育者としての誇りにかけて、また自らも自由や平等、そして平和を欲求してやみません。そして、子どもの笑顔を守り、自らの教師としての人生を実りあるものとするためには、真に自主的で、民主的な「私たちの組織」〓組合が必要不可欠であることを痛感してきました。そして、私たちは痛苦の体験から組合を結成しようと決意しました。


 もとより、私たちは平凡な教師の集まりにすぎません。      

 私たちは、非力であるが故に、仲間の輪のなかで、一緒に歩むことを望みます。他の仲間と力を合わせ、一緒に、この三河の地のどこからでも、子どもと教職員を守る運動を取り組むために励まし合い、力をあわせたいと思います。

 人事権を理不尽に行使し、日々様々な手段で教職員を支配する首尾一貫したシステムに対し、自分を守る何ものもない教師がいかに無権利であり孤立させられてきたか、私たちは十分すぎるほど体得してきました。流された涙、体験された苦痛は、あまりに多く、それは今も続いています。

 どんなささいな「要求を実現する」のさえ、また、それを守るためにも、日常機能する自分たちの組合が必要です。本当の人権を獲得し、自らの教師生活を実りあるものとするためにも、それは不可欠です。


 このように、私たちは三河教職員労働組合の結成を決意しました。それは、「最後まで
教育の第一線に立とう」と決意した教師の集団であり、子どもと教師の人権を徹底して守りぬき、この三河の地で民主的で自由な教育を願う人々の拠点たろうとするものです。


 組合結成にあたり、私たちは、次のことを組合運動の柱として確認するものです。

 

一、私たち教職員は、子どもをこよなく愛し、

              子どもたちに確かな未来を保障したいと思う。

二、私たち教職員は、平和と自由と民主主義をこよなく愛し、

              その発展を求め、行動する。

三、私たち教職員は、教職員の生命と権利、そして子どもの人権を守り、

              そのために全力を尽くしたいと願う。

四、私たち教職員は、一人一人の組合員が主人公の組合運営に心がけ、

              教職員の組織としての信頼を勝ちとりたいと願う。

五、私たち教職員は、「教え子を再び戦場に送るな」の旗を高くかかげて進む。

 

 この決意を胸に、ここに教職員の良心をかけて、三河教職員労働組合を結成する。

 

        一九九三年 五月八日 三河教職員労働組合結成大会