安芸灘とびしま〜しまなみ海道 2010/10月
2日目 呉→ 大三島
今日はいよいよ安芸灘とびしま海道を走ります。といっても先を急がない、ゆっくりペースの50km少々。いろいろとじっくり観光できそうです。
れんが通りを抜ける
休山トンネル内
呉のれんが通りを抜けてR185へ入ります。最初のトンネルは休山トンネル。
ここは車道と自転車道兼歩道が完全に分離されている珍しいトンネルで、とても走りやすいのですが、無灯火の自転車も多いので、あまり飛ばせません。
トンネルを出てまもなく唐突に歩道が狭くなり、どうやら自転車は歩道を走れないようなので、交通量の多いR185の車道を東へ向かいます。
快調に走り、休山トンネルとは違って、ごく普通の構造の仁方トンネル、そして仁方第二トンネルを抜けるころには交通量がぐっと減って走りやすくなりました。
安芸灘大橋への分岐
料金所─自転車は無料です
安芸灘大橋を渡り、下蒲刈島へ降りると、時間の流れかたが変わったのが すぐにわかります。本州とは全く違う、のどかな村落。
安芸灘大橋を渡ると
ゆるやかに時が流れます
石畳路を抜けると、蒲刈大橋が見えてきます。
これでも余裕のあるスケジュールなのですが、この下蒲刈島を巡るゆとりまではなく、残念。次回はさらにゆっくり来ようと思います。
蒲刈大橋へ
瀬戸内の自然を堪能
橋を降り、上蒲刈島を四国を見ながら東へ走ります。自然が破壊されていく採石場や運搬船を目の当たりにしつつ、原トンネルを抜けると、そこは楽園でした。
暖かい日差しと、やさしく穏やかな波。いろんな種類の鳥や虫たちの声。
人間は、人間たちだけで世界を構成しているのではない。こんな、豊かな自然とともに存在しているのです。自転車で走っていると、一層実感できるような気がします。
立派な大浦トンネルを抜けると豊島大橋です。
豊島大橋
静かな島内
豊島でもゆっくりしたかったのですけど、今回は順当に島の北部を走っていきます。
本当に静かな、すばらしいところです。 自転車で走る速度でも、速いと感じさせる空気でした。
さて、豊浜大橋への分岐から厳しい上りになりました。走り的には ここが一番のハイライトだったのでしょう。(後で調べたら平均勾配10%でした)
上りになると速度が落ちるせいか、みかんの木が目に入るようになります。もっとも果実はまだ青く、彩を増すのはまだ先のことでしょうが。
ピークを過ぎて下っていくと豊浜大橋。そこから大崎下島北側を走っていきます。
岡村島が見えます
御手洗港
御手洗に到着、街並みを散策します。
旧い街並み
商店が並ぶ通り
昭和初期を思わせる街並みで、かつて栄えたと言われるその規模は決して小さくありません。離島で これだけのものを保存し、生活していくことは さぞかし大変ことだろうと想像します。
大長のみかんジュース
小長港からフェリー
御手洗から来た道を戻り、大長でみかんジュースを飲みます。
比べるのが失礼ですけど、市販のジュースとはまるで違う! すっぱいものが好きな私はしっかり2杯飲みました。
今までの疲れも吹き飛んだ私は、快調に小長港へと向かい、しばしの待ち時間の後、明石港行きのフェリーに乗船しました。
ここで一緒になったロードバイク乗りのSさん、もう現役を引退されてずいぶん経つとのことでしたが、元気いっぱい。今日も広島県 安浦から呉〜とびしま海道を走り、この後明石港から大崎上島を縦走、フェリーで竹原へ向かい、安浦に戻るそうです。
いいなあ。こんなルートをときどき走れるなんて。
いろんなことに精力的に活動されてみえるSさん、私の旅装にも興味津々でした。機会があれば自転車旅にも挑戦してみてくださいね。
Sさんと楽しくおしゃべりしていたら、明石港にすぐ着いてしまいました。
ここから約7km先の木江 天満港まで走ります。
明石港
木江へ
なぜか他の島々と違い、海の色が違って見えます。すごくキレイで吸い込まれるかのような色なのですが、その穏やかさの下には厳しさも隠されている、そんな人工的な景色ではない、優しいだけじゃない本来の内海をちょっと感じさせる海の色でした。
気のせいかもしれませんが、ここ大崎上島では、完全に本土の空気が絶たれ、島固有の空気に満ちているのを感じます。
時間の流れが、完全にこの島のペース。本土とは橋でつながってないことも大きく影響しているとも思いますが、まもなくその固有の空気を確信することに。
木江に到着、フェリーまでまだ時間があったので木江の旧い街並みを見て回ります。
旧い街並み
旧い街並みといっても、隣島の、大崎下島の御手洗とは まるで雰囲気が違います。
私は建築や街路整備などに全く明るくないので、何がどう違うのか具体的に説明できないのですが、とにかく違うのです。
街の中がひっそりとしているのは御手洗地区も同じ、ほどほどに生活感があることも同じですが、ここは時間の流れがゆるやかなのではなく、ほぼ停止しているのです。
そして、ちょっと失礼な表現で申し訳ないのですが、よそ者を拒む空気、我々旅行者が何となく居づらい空気があります。
なぜだかわかりません。本土と橋でつながってないことや、隣の大崎下島を紹介しているガイドブックはあっても、ここ大崎上島は掲載されていないことが多いことも、何か関連していることがあるのかもしれません。
やや新しめの街並みのほうでも、食堂や喫茶店、コンビニの類は全くありません。
あっても営業していません。これだけ観光客が少なく、人通りも無いのでしかたないことなのかもしれません。妙に酒屋だけが目立ってるように見えました。
明石港からバスに乗った妻は、地元の、温かい老夫婦と楽しくお喋りしながら木江まで来たとのこと。その老夫婦によると、島内の人たちはほとんど皆顔見知りで、とっても仲が良いとのことです。ただし、島の外からの訪問客に対しては、どうしても警戒してしまい、大歓迎してもてなす、というような雰囲気は昔から無いようです。
なるほど... それが良いことかそうでないかは別として、だからこそ旅行者には居心地の良くない雰囲気が醸成され、だからこそ旧い街並みが昔のままの形で残り、だからこそ利便性とは距離の置いた生活環境が続いている。
「それでも40年ほど前は、釣り客やレジャー客が訪れ、賑わっていた。今じゃ何も無いけど」 そう話していた老夫婦にとって、ここはかけがえのないふるさとなのでした。
私にもわかる気がします。
島の外への病院通いがつらくても、台風のときに古い家屋が思いきり揺れても、日常の買い物が不便でも、他には替えられないものが、ここにはある。
木江 天満港
大三島へ向かいます
こじんまりとした天満港からフェリーに乗ります。ちょっとした船旅ですけど、これがいいんです。島と島の近さ。中〜長距離フェリーでは味わえないユルさ。
20分少々で大三島の宮浦港へ着きました。1年前にも来ましたが、何も変わってません。懐かしいです。温かく、穏やかな空気がたまりません。
宮浦港
大山祗神社へ
今回は自転車道を通らず、大山祗神社まで参道を上っていきます。
同じ島内でも、東側の橋がかかる地区とは ずいぶん雰囲気が違います。
いつも利用している旅館に到着し、まず大山祗神社へ行きました。
境内に入ると、空気が変わりました。清々しい空気。そして風格のある社が、変わらずにありました。飛鳥〜奈良時代から変わってないのです。
きっと今後もずっと変わらないのでしょう。いや、変えてはいけないのだと思います。
やはりこの神社は格が違います
温泉からの夕暮れ
昨日も今日も、あれこれと思うことはありましたが、温泉に入って、旅気分全開になりました。考える旅も貴重ですけど、やはりこうやって心と体を開放しなくっちゃ。
夕食は楽しみにしていた魚料理。
クロダイ・カンパチの刺身にはじまり、メバルの煮付け、オコゼの唐揚げ、鯛めしなど、余計な味付けが一切無い、素朴な料理。
素材がいいからこそ、シンプルに食べるのが最高です。