京都 洛北と洛南 2017年4-5月
1日目 転の章と結の章 >2日目 >3日目
2日目 京都市街→城陽市→京都市街
朝食はビジホ近くのベーカリーでモーニング。前日よりかなり軽めなものの、この日もそれなりに走るためしっかり食べておきます。
というのも、京都市に近い城陽市という地域の酒造で販売されている梅酒がTVで紹介され、おいしそうだったから買ってこいという妻の指令が出されており、山側ではないし隣市だろうし、たいした距離じゃないだろうといい加減に安請け合いした私でしたが、手元の大雑把な地図で前夜確認すると京都市の隣市は宇治市、城陽市はその隣で目的地までどうやら30〜40kmほどありそうなのです。
朝食は大事です
桂川でもポツポツ降りました
自転車に荷物を積んで走り出しました。また同じ宿に戻ってくるのにわざわざ2泊3日の荷物を積む変態サイクリストの私。異様な出で立ちのまま、京都市街をまず西へ。混雑する市街を、地元の方々に倣って走ろうとしますが皆様動きが俊敏。中でも電動アシスト子供乗せママチャリが最強、無敵です? 離されないよう、しばらく後をついて走り、混雑する区間を抜けると、この日は天候が不安定で早速雨が降り始めました。
それでもまとまって降ることもなく、ポツポツと打たれつつ西京極から桂川サイクリングコースを南下していきました。前日の賀茂川沿いとは異なり、よく整備された道なせいか、ロードバイクがかなり多い。しかも皆様速い。サイクリングというよりもエクササイズとかトレーニングのように見えます。
雨が収まってきましたが今度は風が出てきて、向かい風に悩まされるようになりました。スローペースで走る私を次々に追い越していくロードバイクの中で、ややゆったりしたペースのロードバイク、対向車が来ていたにもかかわらず強引に抜いていきました。どうやらご同輩くらい。キレイに整備されたバイクとは言い難く、ペダルはビンディングではなくただのフラペ。彼もまたエクササイズなのでしょう。あるいは前へ出れるのなら前へ出ないと気が済まないタイプなのかもしれません。同じようなペースだったので、ついていって風よけにさせてもらいつつ、久世橋あたりからずっとそのまま京川橋を越え、さらに御幸橋。彼の推定10kg前後のロードバイクに、当方推定20kg前後のARAYA Diagonaleが追走する姿は異様でしょうが、向かい風がいくらか緩和できて助かりました。ありがとうございます。
御幸橋を過ぎると向かい風が収まってきて、先行の彼がペースを上げました。おそらくフロント50T×リア12〜13T。離されかかります。こちらも一速ギアを重くし、フロント44T×リア14Tで追走するも、これでは当方が消耗してしまいます。木津側大橋を過ぎ、雨が強くなってきたこともあって、流れ橋で追走を諦めました。
天候が回復せず
流れ橋で本降りのち曇りに
しばらく休憩した後、走り出すともう脚がヘロヘロでした。バカですよねえ、少々ゆったりペースとはいえ、ロードバイクについていくこと自体が無茶だというのに。自分の自転車と年齢を考えろということですね。しかも前日のダメージが残ったままなのか、もう脚が売り切れ状態。でも落ち込むことはありません。最新のカーボンやアルミフレームの自転車と異なり、ARAYA Diagonaleのようなクロモリフレームのツーリング車は、脚が売り切れてもそれなりに走ってくれますから。ペースが落ちたままゆるゆると進み、山城大橋まで来たところでサイクリングロードを離れて木津川を渡り、目に入った食事処でお昼にしました。周囲に店舗が少なそうですし、食べれそうなときに食べておかないと。
地元の方々が訪れる食事処
天ぷらうどんとおにぎりのセット
細めのうどんと関西風の出汁がサイコー。つゆを飲み干してしまいました。
満腹になったまま、目的地である近くの酒造へ向かいます。雨は上がり、疲れた私の体にも日差しが照りつけるように。国道を逸れて挟路へと入っていくと、こじんまりとした住宅街の中にJR奈良線の駅があり、線路を渡った先に建ち並ぶ蔵が目的地でした。ここまで約40km。暑さと疲労でまいっていた私はまず青梅サイダーを一本。爽やかな梅の風味に、いくぶん疲れが癒やされるようでした。お話を聞くと、日本酒造りが本業で数々の蔵は明治の時代より続いているそうです。決して大規模ではないものの、地域に根ざした実直なお仕事ぶりが好印象。自転車で持って帰ることとお試しの意味もあって小瓶の梅酒を買い求め、帰路につきました。
目的地に到着
青梅サイダー
来た道を戻ると距離が多めだし風に悩まされるかもしれないと、国道24号を北上することに。運の悪いことに午前中は向かい風だった南風が、午後から北風に変わり、またしても向かい風の中を進むことになりました。私の人生、だいたい逆風ですから。脚が売り切れ状態のまま、交通量が多く混雑する中をひたすらだらだらと進んでいき、宇治市に入った後、休めるところがあったら早めに休もうと思いつつ観世橋に到着。伏見桃山城も伏見稲荷大社も観光する元気がなく、ズルズルと走り続け、十条あたりに来たところでややレトロなカフェを見つけ、ようやく休憩にしました。
観世橋
カフェで休憩
コーヒーがすっきりとしていながら香りが良く、酸味が爽やか。ママさんに尋ねると自家焙煎だそうです。よかった、おいしい店に入ることができて。
すっかりくつろいでからは鴨川沿いを北上。
鴨川
カモの親子
賀茂川ほどではありませんけれど、鴨川もいいところです。風に吹かれてぼんやりしていると川の中州からカモの親子が出てきて川に入っていくのが見えました。ちっちゃな子ガモたちも愛らしい。親のそばを離れない子ガモもいれば、すぐに離れる子ガモもいて、カモもそれぞれに個性があるのかもしれません。
のんびりと鴨川を北上し、市街地のビジホに戻ってきました。
この日の走行距離約70km。標高差はほとんどありませんけれど、前日のダメージが残っていて、体力をほぼ使い果たした気がします。
朝、保管庫から自転車を出してもらったときのフロントのキレイなおねえさんに城陽市まで行くと話したのですけど、そのおねえさんにまた自転車を預けました。おねえさんが淑やかな関西弁のイントネーションで私に尋ねます。
「城陽市へは行きはりましたか?」
「はい、無事梅酒をゲットしました」と私。
「何て名前のお店ですか?」
「城陽酒造というところです。ベタな名前ですよね」
「あはは、後で検索してみます」
「え?」
「私、梅酒が好きでして」
標準語ではなく柔らかな関西弁が嬉しい。キレイなおねえさんは少しはにかんだような表情を見せていました。ほんの僅か心を開いてくれたことが旅人としては嬉しい。アホなオッサンの勘違いかもしれません。相手は接客のプロ。すべてが営業トークなのかもしれませんけれど、それでも良いのです。
ちょうどフロントが空いていたので私が「梅酒がお好きでしたか。お仕事中すみませんが、それでしたらお店でいただいたパンフ見ます?」と差し出すと、興味深そうにおねえさんがパンフを眺めていました。
フロントのもう一人のおねえさんは城陽市から通勤されているとのことです。
「何もなくてイナカなところでびっくりしはったでしょう?」
「いいえ、静かで良いところでした」
こうして話が繋がるのでありました。ほんの些細なことですけれど、私の勘違いでしょうけれど、ご褒美の類はたいてい全く予期せぬときに突然やってくるものです。