しまなみ海道ふたたび 2009/10月
3日目 大三島→ 道後
旅館を出発し、大三島の南側を、反時計周りに走ってみます。
旅館の女将が少々驚いたような表情で「山道ですよ」と心配してくれましたが、「まぁ大丈夫でしょ、ここのおいしい食事をいただいて元気になったし」と返した私。果たして…
南側へ
東浦峠
宮浦港から少し内陸にはいると、島の光景というより、どことなく牧歌的な景色になります。それとともにもれなくアップダウンもついてきます。東浦峠もキツかったです。体力使いました。
海岸線に出るとはるか彼方に橋が見えます。大三島橋ではなくて伯方大島大橋か。
ふるさと憩いの家
橋が見えます
大型バイクに乗っていた夫婦らしきペアが印象的でした。島内をゆっくりと、おそらく30km/h以下で走っていました。スポーツタイプの大型車で、そんな速度で走るのは拷問ともいえる気がするのですけど、ひょっとしたら島の空気と、自分たちなりにシンクロしていたのかもしれません。
ここからの上りもそれなりに本格的。海岸線から山に向かって上る一直線の道は、反対方向に下れば相当な勢いがつきそうです。そのまま海にダイブすることも不可能ではないかもしれません。
1.5車線分に狭まった道を上り、今度は下ってしばらくするとあっけなくトンネル。トンネルがあるということはここが頂上で、あとは下りばかりかと思ったら甘かった。前方に大三島橋が見えていながら何度もアップダウンを繰り返します。3年前だったらとっくにへばっていたことでしょう。
ようやく大三島橋にたどりつき、伯方島へ渡ります。
大三島橋
伯方島
前回伯方島をほぼ一周しているので、今回は最短ルートで伯方大島大橋へ。
伯方S・Cパーク
伯方大島大橋
それにしても風が強いです。だんだんペースが落ちてきました。橋上もそれなりの向かい風。フロントはセンターだがリアはロー側のギアを使わないと前へ進めません。
大島半周も考えていたのですが、この強風、海岸沿いは避けて島の中央を縦断する道を選びました。しかしここでも向かい風。上りはフロントギアをローへ入れないと体力が続かない。それどころか下りでも漕がないと前へ進まない状態になりました。
ようやく来島海峡大橋が見えた
いただきます!
伯方島から30分程度で着くかと思った道の駅よしうみいきいき館ですが、強風のせいか50分ほどかかってしまいました。これでは先が思いやられます。
海鮮丼を食べてエネルギー補給。サイクリストは己の肉体が動力源。腹8分目なんてクソくらえ。とにかく食べるしかないのです。
あそこへ上ろう
風が強い
休憩後に出発。強風でもレンタサイクルに乗る女性グループが多いのが印象的でした。今治サイクリングセンターで借りたのでしょうか。大島までなら手軽に来れるのかもしれません。
どちらかというと男性陣はキレイなロードバイクに、ウエアを決め、計画的に走っているようでしたが、女性陣はカジュアルな服装のまま、レンタサイクルを上手に利用して観光しているように見えました。なんとなく後者のほうが人生を楽しむ能力に長けているように感じたのは、私のただの思い過ごしでしょう。
風が収まりません。来島大橋海峡へのアプローチを上りきると、やはりそこも強風。吹き流しが真横、いえ、きっちり自分の方を向いています。風速5m以上の向かい風です。途中の馬島へも寄り道したかったけど、この強風。さすがに後のことを考えてあきらめました。
今治へ降りたら少しは風向きが違うかと思っていましたが、甘い。一直線に自分の方へ風が吹き付けてきます。
ここからの道のりが長かった!
下りは前に進まず、平地用~軽い向かい風用のギアを使い、平地では上り用のギアを、軽い上りで激坂用のギア… 一向にペースが上がらない。
時速20km/hなんでとんでもない。15km/hすら出ていないでしょう。時折、これは向かい風なんかじゃなくて、単に己の体力が尽きただけじゃないかと錯覚することがありました。しかし周囲をよく見れば、枯れ葉やゴミが自分の方に向かって飛んでくるし、中学生の自転車集団は平地なのに立ち漕ぎしているし、日傘を持った年輩の女性は、その日傘に振り回されています。
もう脚がパンパンです。停まってひと息入れても脚の感覚は戻らない。つい「どうしてこんな目に遭わなくてはならないのか」と不満も沸き上がってきますけど、そんなことを言っても始まらない。とにかく一歩一歩、いや、一回転ずつでも前へ進むしか選択肢が無いのです。
なんとか道の駅 風早の郷風和里にたどり着いたときにはすっかりバテバテ。自転車を降りて歩く、その歩き方がおかしいのが自分でもはっきりとわかります。食欲も全く無かったですが、これではまずい。動力源にはならないかもしれないけど、何か食べてわずかでもいいからエネルギーに換えないと。
道の駅
じゃこ天ほか
じゃこ天、じゃこごぼう天、野菜天の3天セットを胃に流し込みます。ふと自分の顔を撫でると、塩だらけ。風はいくぶん冷たく、汗はかいていないから、これは海風のせいか、それともやはり自らの汗なのか。
30分ほど休み、脚の感覚がほんの少し戻ったところでスタート。夕刻になっても向かい風は変わりません。少しずつ、少しずつ進みます。北条~粟井を過ぎるころには、向かい風がときどき弱くなり、たまに止むように感じました。
平地で平地用のギアが使える。当たり前と言えば当たり前のことですけど、今の自分にとってはありがたい。自然とペースも上がります。ペースが上がるということは体力がまだ残っているということだ。おお、自らの肉体、そう捨てたもんじゃない、むしろ とっても信頼できる、そう思った次の瞬間、強烈な風が正面からまともに吹き付け、たまらずにふらついた後、思い切りペースが落ちました。
トンネルに入った瞬間、自分と同じ方向で、ペースが同じかそれより速い、旅装の自転車を見ました。トンネル内には歩道があるのに車道を、しかも右側の、早い話 反対車線を逆走しておりました。
既に前方から車が数台迫ってきています。わっ! あぶない! そう思った瞬間、自転車の姿は消えていました。
車が通り過ぎた後には何もありません。
あれはいったい何だったのか? 幻でも見ていたのかもしれません。
トンネルを2つ超えると、風も収まりペースが戻ります。が、さすがにもう体力が尽きようとしていました。
松山市に入り、中心部を回避、道後温泉へ向かいます。
自歩道を中心に走ると段差が多く、痛くなってきていた尻がそろそろ限界。もう休もう、そう思ったとき道後温泉に到着。あの向かい風の中とうとう走り通したのです。
松山市内
道後温泉に到着
駅前で待ち合わせした妻と、私だけちょっとした感慨に浸りながら駅前でコーヒーを飲みます。脚が痛くて、2階にある喫茶店への階段を上がるのがつらい。
大島から平均時速12km/hちょっと。あの向かい風の中、休憩時間も含めて この数字なら、運動不足のオッサンにしては立派なほうでしょう。それに、道中あれだけつらくても、動力付の乗り物をうらやましいとは思いませんでした。
… すみません、ちょっとだけ思いました。
宿に自転車を置いて、夕食へ行きます。
ああ、このために走ってきたのです
このために!
変な歩き方をしながら宿に戻り、風呂でゆっくりとストレッチしました。終わった。終わったからといって あわただしく帰るのはもったいない。時間が許す限り、こういう一区切りがあるだけで、旅がいい思い出になる気がします。