【悪夢2】電気蜘蛛は胡蝶の夢を見るか

【悪夢2】電気蜘蛛は胡蝶の夢を見るか

成長する悪夢の話。こちらの続きです。



 何度目かの昏い夢

脳みそを掻き回されるような悪寒が絶えず襲う


暗闇を蠢く虫は何度見ても慣れるということはなく心を乱した

夢は少しずつ成長しているのか 日に日に変わっていく
今日の夢も少しだけ様子が変わっていた


足元に無様に転がる四肢をもがれた蜘蛛に視線を移す

よく見ると蜘蛛の周囲には散らばった翅や昆虫の足
この蜘蛛が貪った跡なのだろうか

そして巣、いや正しくはその残骸
破られた蜘蛛の巣は淡く光を受け止めながら糸をなびかせていた



ふと、あたたかい風を頬が撫でたのを感じて気配を目で追いかける

蝶だ

一匹の蝶が空中をふわりふわりと飛翔していた

足をもがれた蜘蛛は虚ろな目で蝶を見上げる



 これは なんだ?

何故だか悲しくなる
どす黒い何かが流れてくる

これは忘れようとしていたものだ

何かを異常なほどに恨んで、欲して

こんな醜い感情は

誰にも 見られてはいけないのに



誰かに見られている




「おや」


闇が喋った

くすりと楽しげに笑うと闇の中心がパクリと割れた
中に覗く白い歯が闇の黒と対照的で
それはまるで三日月のように見えた


「こんな単調で訳の分からない夢、最初はつまらなかったけど
 ちょっと面白くなってきたんじゃない?」


 くすくす くすくす


とてもとても楽しそうに笑う声の主はどこにも見えなかった





悪夢その2!
ビーチバレー(6月中旬)の後の悪夢です
彩之進様が見てる…