(「中日新聞」)
 愛知県犬山市は、市内全小中学校の全学年で1学級30人以下の少人数学級を実施する方針を固めた。市区町村で常勤講師を独自に採用できるよう、文部科学省が法改正の準備を進めている規制緩和の動きに対応し、早ければ04年度から始める。少人数学級は22府県が特定学年で導入しているが、全学年の実施は全国で例がない。犬山市は小学校10校(計133学級)と中学校4校(計56学級)があり、全学年を30人以下の学級にする場合、試算では新たに44学級が必要となる。計画では33人の常勤講師を採用。さらに、通常は担任を持たない校務主任や専科教員の計11を担任に加え、全学年の導入を実現。(2002年9月24日)


(「朝日新聞」)
 小中全学年30人学級に 犬山市,04年度
 市教委に「授業改善プラン検討委」 導入、校長の裁量で
 独自の教育改革を進める愛知県犬山市は24日、市内の小中学校全学年で30人以下の少人数学級を原則的に導入する方針を決めた。国が市町村で常勤講師を独白採用できるよう法改正を進めていることを受けた動きで、04年度にも実施する方針。同日、同市教委は「授業改善犬山プラン検討委員会」を設置した。仕組み作りや導入後の授業の改善策を研究する。
 導入は各校長の裁量に任せ、すでに実施しでいる少人数授業やチームティーチング(TT)と併用するなど、学校独白の授業や学級の編成方法を検討してもらう。04年度に導入すると、小学校10校で27クラス、中学校4校で17クラス増えるため、教育環境の整備や白主財源確保の方法も検討する。01年度から都道府県の裁量で、1学級を40人以下にすることが認められ、少人数学級を導入する自治体が相次いでいるが、小中学校全学年で導入されれば全国で初のケースとなる。
 検討委員会では、12月に中間報告、来年3月までに各校が具体的な教育課程を検討し、6月にも「04年度実施計画案」を完成させる方針だ。
 同市教要の瀬見井久教育長は、「いつ少人数学級が可能になってもいいように、指導方法や制度面の充実を図りたい」と話している。(2002年9月24日)

少人数学級 「導入に2億円必要」 犬山市教委が試算報告
 小中学校全学年で少人数学級を導入する方針を決めた犬山市で24日、定例教育委員会が開かれ、同市教委が、導入に必要な常勤講師の採用などに約2億1千万円の市費が必要とする試算結果を報告した。
 少人数学級を04年度に導入すると、小中学校14校で44学級増える。担年を持たない校務主任11人のほか、33人の常勤講師を採用する方針で、試算では33人分の人件費に1億6500万円、校務主任が受け持つ校舎の維持管理などの雑務を行う技術者6人に約1300万円、中学校の非常勤講師11人に約3千万円の市費が必要と報告した。
 非常勤講師は今後、各校の意向に合わせて増減していくという。同市は現在、非常勤講師42人の人件費に約1億1千万円を投入している。
 教育委員からは、導入に向けて「教室は確保できるのか」「必要な常勤講師は確保できるのか」などの質問が相次いだため、同日設置した「授業改善犬山プラン検討委員会」の検討課題とした。(2002年9月25日)


(「しんぶん赤旗」)
 小中校すべての学年で30人学級 愛知・犬山市
 全国で初 04年度から
 愛知県・犬山市の教育委員会は24日、2004年度から、市内全小中学校の全学年で30人以下の少人数学級を実施する方針を決めました。小学校低学年など特定の学年に限定した少人数学級はありますが、全学年での実施は全国で初。全日本教職員組合は「国の責任で実施せよ」と強調しています。
 同市には現在、小学校が10校(計141学級)、中学校が4校(計59学級)あり、30人以下学級にすると44学級増える予定です。このため同市教委は、市独白の予算で常勤講師を33人採用するほか、現在担任を持っていない教員11人を担任とすることで対応する方針です。
 担任をできる教員を採用するのは、これまで都道府県に限られていましたが、文科省は、04年度を目標に、市区町村の予算負担であれば、独自採用ができるよう法改正の意向です。
 現行制度のもとで、同市では、昨年度から独白に非常勤講師42人を採用し、少人数授業を実施してきました。「少人数授業はよい結果を生んでいるが、学級規模そのものを小さくするのが一番よく、最終日標だった。文科省の新方針を受け、30人学級に踏み切ることにした」と、有本高尉・市教育委員会指導課長は話しています。
 非常勤講師は、遠足などの行事に出られず、夏休みなどは無給となるなど不安定な待遇です。常勤講師は、正規教員と同様の勤務時間、仕事内容となることから、同市では「正規教員に近い待遇にしたいと考えている」としています。

(関連記事)
 犬山市の30人学級で談話 ゆき届いた教育へ効果
 全日本教職員組合の吉田洋・教育財政部長の話
 犬山市の決定は全国的にみても大きな意義があります。今年度から低学年での少人数学級を実施したところでは、子どもにも教師にもゆとりが生まれ、ゆきとどいた教育を進める上で大きな効果があることが報告されています。しかし、国が少人数学級に背を向けているため、多くの自治体は財政的な問題から全学年での実施に踏み出せません。私たちは国の責任で少人数学級を実施することなどを求めて、現在、3000万人署名運動をおこなっています。犬山市など地方で起きている変化を広げて、国を包囲するような運動にしていきたいと思います。

国庫負担廃止狙う小泉内閣 地方にまかせず国の責任で
<解説>30人学級編制
 現在、国は学級編制の標準(一学級の子どもの上限数)を40人とし、それに必要な教職員の給与の半分を負担しています。昨年の法改正で、都道府県が人件費を全額負担すれば、40人以下の学級編制ができるようにしました。
 それ以来、少人数学級が各地に広がり、文科省の調べで今年度22道府県で実施されています。地方の負担になるにもかかわらず少人数学級が広がっているのは、それが保護者や教職員の強い要求だからです。
 今回、文科省は、市町村が財政負担すれば、市町村独自で教員を採用できるようにする方針です。地方の裁量を認めるものの、国はいっさい金を出しません。
 現在でも、地方が丸ごと負担をかぶるため、採用される教員の待遇に不安がつきまとい、非常勤講師の採用が多く、子どもたちの教育をすすめるうえで制約になっています。
 国の学級編制の基準を30人とし、教職員給与の国庫負担制度を維持することで、財政力にかかわらず全国どこの自治体でも30人学級が実現できるようにすることが必要です。しかし国は、それに背を向けています。文科省は、特定の教科で習熟度別などの少人数授業をすすめる方針で、学級規模そのものを小さくすることを拒んでいます。
 さらに、小泉内閣は、国の財政支出を減らすために、教職員給与の半額国庫負担の現行制度すら廃止をねらっています。問われているのは、父母、教師、子どもたちの願いに逆行する小泉内閣のこの姿勢です。(西)(2002年9月25日)

犬山市,小中全学年で30人学級実現(2004年度から)についての各新聞の論調
(2002.9.24.〜25.)
「中日新聞」「朝日新聞」「しんぶん赤旗」