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着艦競技機 製作ノウハウ
 着艦競技はヨーロッパ・アメリカでは人気もあり、盛んに行われているようですが、 日本では参考となる資料や情報が少ないため、岡崎模型飛行倶楽部で今まで蓄積したノウハウを紹介します。
 特に一般のスタント機にはないエンコン(=エンジンコントロール)、フラップ、エルロン、着艦フックのリンケージなど、いろいろな工夫が必要で、それもまた面白いものです。興味を持った方はぜひ一緒に着艦のスリルと感動を味わいましょう。


【エンジン
@安全面と手軽に楽しめることから、倶楽部ローカルルール上2サイクル20クラス、4サイクルとも30クラスを上限としています。

A高速、低速飛行と着艦を行うためには、スロットルキャブが必ず必要。(RC用のエンジンであれば問題ありませんのでかえって入手しやすいのでは。)

B4サイクルは始動にコツがいりますが、低速時の安定性とトルクは◎で着艦には適していると思います。何より実機感のあるサウンドが・・・。
<倶楽部内のエンジン使用状況と過去の大会での速度記録>
エンジン 使用プロプ 高速 低速  その他
OS FS−30 APC 9×5 84.0km/h 3ライン
OS FS−26 ジンガー 9×5 78.8km/h 38.2km/h 3ライン
TORNADO 8×6(3B) 60.0Km/h 47.0Km/h 3ライン
OS 15LA MK 8×5 86.9km/h 51.4km/h 2ライン
MK 8×6 81.0km/h 50.0km/h 2ライン
APC 8×4 70.0km/h 45.8km/h 3ライン
 ※上記記録はあくまでも参考であり、飛行機自体の重量、抵抗や後述するラインの本数で差がでます。

【機 体】
@着艦競技機は各舵や着艦フック、エンコンとリンケージが複雑になるので、プロフィール機がお勧めです。(スケール感の得点が減点されますが)

A機体サイズスパン最大が110cmと規定してありますが、エンジンサイズから適当な大きさだと思います。(何よりもスパーに使うヒノキやバルサの規格90cmに翼端付ければちょうど良いサイズ。)

B翼型は着艦専用機とするのであれば、クラークYに近いものが良いと思います。(低速で失速ギリギリで飛ぶことができる翼形が良いが、強風時は風に対向するとき浮いてしまうかも。)

Cスタント機等に比べ、かなりのハードランディングをするので、脚は丈夫な方が良い。(ランディングギヤは2.6mm以上、取付部もできるだけ丈夫に。)

Dタイヤ径は50mm以上のものが良い。(着艦用拘索が甲板から約25mm浮いているため、小さいタイヤでは引っ掛かる。)

E競技時間はスタート合図から最大8分ですが、発艦〜高速7周〜低速7周〜着艦と短い時間で終了します。タンクはそんなに大きなものは必要ありません。

Fタンクの形状は、スタントタンク(ホームベース型や三角型の絞ってあるタイプ)は、低速時で遠心力が働かなくなると、最後まで燃料が供給できないかもしれません。真四角のスポーツタンクかクランクタンクが良いと思います。

【3ラインの勧め】
 エンコンを第3ラインで操作するためには、専用のベルクランクとハンドルが必要です。上げ舵、下げ舵やワイヤーのテンションでエンジンスピードが安定しないようでは着艦は不可能です。過去のUコン技術を参考に自作するか、市販品(アメリカBrodak製) のものが
入手可能です。
Brodak3ラインハンドル
・・・\6,750程度(ネット価格)
Jロバート3ラインベルクランク
・・・\2,180程度(ネット価格)
3ラインリードアウトワイヤセット
・・・\ 720程度(ネット価格)
3ラインリードアウトガイド
・・・\1,050程度(ネット価格)

<Brodak3ラインシステムの留意点>
@リードアウトワイヤーのうち、エンコン用パワーリードアウトは47mm長くすること。(付属の説明書(もちろん英文)を読んでもなかなか理解できず、現物で何度も実験するなど苦労しました。)
 Brodak3ラインハンドルとセットで使用する場合は、上記の47mm長くすることで、ワイヤーは同じ長さにすることができます。
Aハンドルの第3ラインの稼働部が固いため、バラしてグリスを塗り、暇に任せて柔らかくなるまで動かしました。

【リンケージ】

 倶楽部内メンバーの飛行機を見ても様々で工夫の跡が見られます。
 基本的な動きはエンコンスローでカムの働きによりロックが外れ、
 @着艦フックのロックが外れ、フックが出る
 Aスプリングの力で主翼フラップが下がる
 B右翼エルロンが上がる
 Cラダーがオフセットされる
 など、スロー時にラインのテンションが保たれるような各舵の動きが一瞬で行われます。
ベルクランク部。
第3ラインは前方へエンコン用、
後方へスロー時の仕掛けのカムへ。
カム部分。
スローになるとカムが外れ、エルロン、
フラップ、ラダーが動く。
ラダーのリンケージ。
フラップとエルロン。
フラップが下がり、右翼エルロンが
上がる。
エンコン部。
ハンドルのストロークとスロットルの
ストロークを合わせるためベルクランクが。
エンコンのロッドに連動した着艦フック
トリガー。
スローになると外れてフックが降りる。

 基本は「Uコン技術 '78 10月号」の信天翁−伍(アルバトロス)を参考にしていますが、この中でもエルロンはかなり効果があるようです。
 また、海外の着艦機ではスロー時に翼端ガイドの位置が後ろへ下がる仕組みとなっているものもあります。
 その他、フルダウンで着艦フックのロックを外したり、エンコンとフラップを完全連動のパターンもありますが、着艦のみでなく高速点と速度差点のためにも、高速時はできるだけ抵抗を少なく、低速時はしっかりしたテンションでコントロール可能なように工夫が必要です。
<リンケージの留意点>
 エンジンコントロールは微妙なため、可能な限り第3ラインをエンコン専用として負荷を無くす方が有利です。つまり、第3ラインにあまりたくさんの仕掛け(仕組み)を連動させると、例えばフラップと連動した場合にフラップ自体の風圧・舵圧でエンコンが変化したり、影響が出ます。

【スライダー】
 最近、Brodakのキット内にスライダーという部品が使われているのに気付きました。このパーツは高速時はワイヤーガイドを前に固定しておき、フルダウンでロックが外れ、ガイドが後方へスライドするというものです。
 機構は至って簡単で、スプリングの着いた棒でガイドをロックしておき、フルダウン時にはワイヤーでこの棒を引っ張り、外れたときに機体の重量(遠心力)でガイドが最高端まで下がるというものです。これにより最スロー時にもテンションが保たれるという訳です。

スライダー装置と3ラインのリードアウト 右翼を裏から見た状態。ガイドはロック。 ロックが外れ、写真の上方(主翼の後方)
にガイドがスライドする。

【シンプルな2ライン】このコーナーは2001さんの記事です。
いきなり3ラインは・・・と思われる方にお勧めなのが低コストで楽しめる2ラインよる方法です。
まずは手持ちの機材を改良して、気軽に2ラインでトライしてみてはいかかでしょうか!(もっとも母艦があっての話ですが・・・)では、OS15LA搭載のSBD-5ドーントレス機を例にして説明します。


@ 3ラインとの比較
メリット ・構造が単純でメンテナンスが楽。ワイヤ、ベルクランク、機材等が従来品の流用で可。(リトルベランカ様には申し訳ありませんが)
・対称翼にして宙返り等のスタントも可。(発艦→爆弾投下→コンバット→着艦も夢ではない)
・ワイヤの抵抗が少ないためスピードが出せて高速得点が稼げる。
デメリット ・微妙なエンコンが困難なゆえ風に弱い、タッチ&ゴー等の高等技が出来ない、着艦のやり直しがきかない。着艦は一発勝負となる。
・エンジンの低速チューニングが難しい(電気や電波の力を借りればできそうですが、それではちょっと・・・)

A リンケージ
 いろいろなパターンが考えられますが、私のはハンドルフルダウンでエンコンハイ→スロー、フラップ水平→ダウン、着艦フックロック→解除の3作動を行います。またフルアップで爆弾投下もできるようにしてあります。
エンコン 基本的にはラットレーサーの燃料カットオフ装置の応用です。水平尾翼上部のエレベータホーンから紐を介してエンジンに固定してあるφ1.2mmピアノ線によるバネを動かし、スロットルバルブを作動させます。フルダウンで高速から低速に切り替わるようにアジャスタブルロッドで調整します。
エンジン取り付けボルトにピアノ線によるL字状のバネを固定。
マフラー下に見えるピアノ線は着艦フック。
赤く見えるのは爆弾。
エンコンハイ状態
左に見える黄色い紐で白いアジャスタブルロッドを操作する。
エンコンスロー状態
フルダウンにより紐が引かれて ロッドを介してスローになるように調整。
フラップ作動 エンコンと同じくフルダウンで水平状態から引っ張りスプリングによりダウンに切り替わる構造にしています。まずフラップ上部のホーンにピアノ線のシャフトを貫通させ、いわゆるかんぬき状にしてフラップを水平にロックさせて置きます。フルダウンの際はエンコン作動用の紐の途中からLリンクを作動させて、かんぬきを解除することによりフラップダウンの状態に変化させています。

水平状態
フラップホーン上部にシャフトが貫通し、水平にロックされている。 スプリングによりダウン状態に。
ダウン状態
エンコン用の紐の途中にストッパーを設けてLリンクを作動させてシャフトを抜く。
フック解除 着艦フックはφ2.0mmのピアノ線で実機同様に機体後部に支点があります。但し、フック長は実機よりも相当長くする必要があるため機体先頭までの全長があり、前述したエンコン用の1.2mmピアノ線のバネでロックする構造になっています。フルダウンの際はエンコン作動と同時に解除され、フック自身の自重で垂れ下がります。また、着艦時の負荷を考慮し機体の支点周辺はベニヤで補強してあります。

フックのロックは前後に調整できるようにタイヤストッパーで固定。 フックの支点はM3のビス
上に見える黄色い紐は爆弾投下用 。
爆弾投下 着艦競技とは直接関係ありませんが、実機点を稼ぐため?に付けて見ました。エンコンとは逆にフルアップ時に水平尾翼下部のエレベータホーンから紐を介してロックを解除し、バルサ製の爆弾をリリースできるようにしてあります。
タイヤストッパーの位置で投下用の紐の長さを調整。 爆弾の手前に見えるピアノ線は着艦フック。

B フライト状況
倶楽部内では2ラインは少数派で私とサーカスさんのヘルダイバーの2機のみであります。2ラインはもともとサーカスさんの発案でヘルダイバーも概ね似たような構造です。
2人でのべ10回以上の着艦を敢行しておりますが、今だ帰還率0%の状況です。特に低速時には風に対しては無抵抗でコントロールが大変です。しかしながら、着艦時には充分にスピードを殺しておかないとフックに引掛かった際に機体に与えるダメージが大きくなってしまします。(ヘルダイバーは一度大破しました。) このあたり、低速をどのようにチューニングするかがポイントだと思われます。
やはり本格的に着艦を行うならば4サイクルエンジン搭載の3ラインがいいのかもしれませんね。
P.S. 爆弾投下は1回成功しており、母艦「舞城」の飛行甲板に甚大な被害を与えております。 以上、不明点やご意見があれば掲示板にてお問い合わせください。


【その他】
@空母「舞城」では、より実機感を出すため、発艦時に使用する自動発進装置が甲板に埋め込まれています。甲板にスケール感の違う助手(怪獣サイズだ!)がいるのは不自然なためです。
 これにセットすると飛行機が持ち上げられないため(当然裏返してエンジン始動は不可能)、エンジンは正立かサイドマウントが良いと思います。
A海外の着艦競技のホームページを紹介します。
 UK Control Line Navy Carrier(http://www.cheffers.co.uk/carrier.html)
 ・・・「UK Nats99 Report and lots of pictures」のページに多数の写真があります。
 CL Flyer's Home Page(http://clflyer.tripod.com/ncs/ncs.htm)
 ・・・「Photo Album」の中の「Construction」には制作中の写真もあります。

 以上、文面では表現しにくいものもあるので不明な点はお気軽に当ホームページ掲示板か下記まで御連絡ください。

 岡崎模型飛行倶楽部 
成瀬昭彦(99艦爆:naruse_val99@yahoo.co.jp)
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