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マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト |
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現在でもこのマサイマラ地域に多くの野生動物が生息できたのは、マサイ族が自然に適応し、自然環境を守り、半遊牧民として生きてきたことが大きな要因だと考えられます。 雨量が少なく、灌木もないこの地では、草を効率よく利用できる牛、山羊や羊を飼育し、草食動物と資源を分かち合い、棲み分けることで共存が可能となりましたが、もし、農耕を主体とする民族であったなら、サバンナを農地として耕してしまい、そこにはもう草食動物は生息する余地がなくなってしまいます。今のような野生動物のサンクチャリーは存在しなかったでしょう。 しかし、彼らには、家畜に蔓延する様々な感染症による生産性の低下、家畜の能力や質の問題、飼養管理意識の低さ、また、生活苦から自らの放牧地を農耕のために土地を手放そうとすること、肉食獣に襲われた家畜の仇討ちや密猟など、このまま野生動物と共存していくためには、あまりに多くの問題を抱えているのが現状です。 今後、この地でマサイ族が半遊牧民として、生活が保証されなければ、このままの自然が保全され、野生動物が守られ、生き続けていくことは困難になるでしょう。 今まさに、単なるダイレクトな自然保護策ではなく、地域社会全体を包括的にとらえ、人々の生活向上を通してのインダイレクトな自然保護策が求められています。
プロジェクトは次のような内容から成り立っています。 1.人と家畜、野生動物の間に発生する感染症対策、 2.家畜を肉食獣から守る対策、 3.家畜の生産性を向上ための対策、 4.密猟者の逮捕、密猟防止のための対策
この内容についての概要は次の通りです。 1.人と家畜、野生動物の間に発生する感染症対策 ・・・・《参考記事》 ○マサイマラにおける、犬のワクチネーションの実施 ワクチネーションは狂犬病、犬ジステンパー、パルボウィルス感染症の予防を目的とし、この地に生活する人々の飼育するすべての犬を対象に、狂犬病とジステンパーとパルボのワクチンを同時接種します。 狂犬病について、この地域では犬の飼育方法は放し飼いであり、野生化した犬もいます。また、野生動物も多く、根絶することは不可能です。それにより、毎年のように人が狂犬病にかかり、特に、犬の世話をよくする子供達に被害が集中しています。 一方、ジステンパーに関しては、1994年に隣国タンザニアのセレンゲティ国立公園でジステンパーウィルスの変異株により、1000頭近くのライオンが死亡し、その他、犬科の肉食獣も大きな被害が出た事例がありました。それによる生態系への影響は計り知れません。このことは野生動物を観光資源としているこの国にとっては、大変なダメージとなります。このマサイマラでも、犬のジステンパーの発生がここ数年間起きていることから、いつ野生動物の間にもアウトブレイクするか分かりません。 ワクチンは、2023年は5000頭を目標に、 再開されました。
○トルコ原産の牧羊犬アナトリアン・シェパード・ドッグを使って、家畜をヒョウやライオンから守る アフリカの肉食獣が人によって殺されるのは、ほとんどのケースが家畜を襲ってしまった結果、その仕返しが原因です。このプロジェクトは、肉食獣が家畜を襲うのを防ぐと同時に、遊牧民が肉食獣を殺すのをやめさせようするのが目的です。 ナミビアでは、1994年以降、チータから家畜を守るためにアナトリアン・シェパードが利用され、成功を納めてきました。そこで、このマサイの地にもこの試みを行おうと、アナトリアン・シェパードを導入し、育成、訓練していこうというものです。2009年1月には第一号となる犬が導入されました。
○アフリカの肉食獣が家畜を襲ってしまった場合、ほとんどのケースは毒薬により肉食獣は殺されます。しかし、その毒殺された肉食獣の検死やデータ収集は、道具やサンプル保存施設がないことからマサイマラでは行われていません。このプロジェクトでは、肉食獣の毒殺のケースの検死、サンプル収集、サンプルの毒素テストなどを行うことで、毒物を特定し、その扱いに制限を加えようとするものです。
○アカシアを使った生きた強固な塀を作る 現在、マサイの集落を囲んでいるのは、切り倒された木で作られたフェンスですが、そのフェンスを強化しなければ肉食獣が忍び込んで家畜を襲ってしまいます。しかし、フェンスを強化するということは木を切り倒さないといけないということになってしまいます。 このプロジェクトでは、フェンスの回りにアカシアなどのトゲを持つ木の苗木を植えることで、木を切ることなく、強化された“生きたフェンス”を作ろうとするものです。 植えられたアカシアの苗木は、特殊な方法で編み込まれ、5年後には木の塀のようなフェンスに仕上がります。
3.家畜の生産性向上のための対策 ○ゼブー牛の優良種牛のリースシステム 多くのアフリカの遊牧民の抱える問題に過放牧があります。これは、家畜の質より数の多さにこだわる人が多く、そこから得られる収入も少ないため、よりいっそう拍車がかけられます。そこで、家畜の売買から一頭あたりの収入が増えるよう、優良な種牡牛が買えない家庭に1ヶ月間、優良な種牡牛のリースを試みるものです。その結果、優秀な子牛が生まれ、生産性の向上につながることを期待します。
4.密猟者の逮捕、密猟防止のための対策・・・・《参考記事》 強盗などのケースにも使用する追跡犬ユニット(訓練されたブラッドハウンド)を密猟対策に使おうというものです。 ブラッドハウンドはアメリカから輸入し、マサイマラでの犬のトレーニングとハンドラー教育を行い、密猟者の逮捕や密猟の予防に活用します。 現在、ブラッドハウンドを購入し、アメリカの追跡犬トレーナーによるトレーニングが2009年3月より始まりました。 |