連載『日中・太平洋戦争と教育』18回  第3部 平和のために  機関紙『未来を拓く』2007年7月号
世論の批判を受け『靖国DVD』撤退
中学校「総合学習」を狙った日本青年会議所“戦争美化”教育プログラム

日本青年会議所は、6月20日に、文部科学省の「新教育システム開発プログラム」に採用されていた“近現代史教育実践運動”の委託契約を“辞退”しました。
 
5月17日の衆議院教育再生特別委員会で、石井郁子議員(共産)が、日本青年会議所作成のDVD「誇り」を手に、「アニメを使って、子どもの心にすっと特異な戦争観が入っていく。靖国神社の戦争観を子どもに刷り込むための教育システムだ」「“靖国DVD”と言わなければならない」と追及してから、全国で「侵略戦争を肯定・美化する“靖国DVD”を使うな」の声が高まり、“辞退”に追い込まれたものです。
  “近現代史教育”プログラムは、中学生の「総合学習」を念頭に置いており、DVD「誇り」の上映とグループ討論を主な内容とし、基本の時間は100分で、開催地の青年会議所メンバーがコーディネーターをするとしています。
  DVD「誇り」は、戦死した青年が現れ、女子高生を靖国神社に誘い、かっての日中・太平洋戦争は、「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい−日本の戦いには、いつも、その気持ちが根底にあった…」と語ります。
 プログラムは、学校の指導案のように綿密に作られています。インターネットから、当日の進行概要」の「歴史ポイント解説」の一部を紹介すると、

B 支那事変(日中戦争)
当時中国は内乱状態にあり日本が中国の内乱に利用され、支那事変は仕組まれた戦争であったことを中心に説明する。
C 大東亜戦争
自国の経済を優先するブロック経済、ABCD包囲網によって資源が止まったことが当時の日本にとってどういったことであるか改めて説明する。
戦争を避けようとした内閣の努力も虚しくアメリカの最後通牒によって戦争が始まったことなどを重点的に説明する。
日本は孤立し、石油等が輸入できなくなった。あなたならどうしたか問いかける。

豊田市教委は「要請」を断った
 
三河教労は、5月29日に、豊田市教育委員会に「DVD『誇り』や副読本を取り入れないこと」を申し入れました。6月29日には以下のような回答がありました。

@ 青年会議所が要請に来庁した。
A DVD「誇り」を専門監の指示のもと、課長はじめ指導主事12名が見て、意見を集約した結果、要請は断った。
B 数校に様子を聞いたが、現在使用した学校はないと把握している。
C ビデオ、DVD、冊子などさまざまな配布や活用等の依頼への対応は校長会議や教頭会議でも話す。

今後も持ち込ませない警戒が必要
 文部科学省の委託契約を“辞退”したといっても、青年会議所が独自に学校に持ち込むことは十分考えられます。今後も警戒する必要があります。

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