経絡治療
経絡学説と陰陽五行説を基本理論とし、経絡の調整を主目的に手足の要穴(五行穴)を利用し、脈が整うことを目標として脈差診で診断します。八木下勝之助、岡部素道、柳谷素霊などが有名です。
人の身体の中を「気」がある秩序に則って動くものと考えれば、そこに或るルートが存在します。
「脈」という字は、こうしたルートを示すものですが、身体の脈に流れるものは「血」であります。
古典医学でいう「血」とは、単に血液という意味だけはなく、もっと幅の広い意味合いを持ち、この「血」も当然、「気」が化成したものであり、「気」の流れ動く様を表わします。
そして、この気血の流れるルートは「経絡」と呼ばれ、中国伝統医学の独自性を際立たせています。
「経絡」は、メインルートである十二本の経脈と経脈をつなぐサブルートやバイパスである絡脈、および奇経と呼ばれる八本の別の経脈とからなります。この経絡は臓腑器官と連動しており、重要な診断ポイントになります。これら経脈を流れる気血の状態が、滞りなく全身をめぐり環の端がなきが如く、休むことなくめぐっている状態が正常であり健康と捉えます。
逆に、何らかの原因で気の流れが滞ると病気となります。これらの経脈の流れる様子をダイレクトに診断する方法に「脈診」という重要な診断法があります。
脈診法の原型は、『難経』という書を基に確立されています。この『難経』では、手首部(寸口)の動脈で身体全体を投影するという特徴的な方法で診察していきます。手首部の動脈部には、手太陰肺経という経絡が流れ、この肺経は摂取した飲食物が気に変化して十二経絡を順行する際の出発点となります。そのため臓腑経絡システムの情報が集約される場所とみなし、この部位の拍動の様子で気血の状態を把握し死生吉凶をうかがうという診断法です。
経絡治療とは、この循環ルートの異常(虚と実)を鍼灸の手技によって調整(補と瀉)し、ご自身の「自己治癒力」に働きかけることで病状を改善していく治療法です。
この治療は、経絡の流れとそれにつながる臓器や経絡の病症を把握し、体質診断が必要ですので、現代医学とは異なった総合的な診察(四診)や治療(本治法・標治法)が必要で、隋証療法(証にしたがって治療する法)ともいいます。
四診 |
望診・聞診・問診・切診(触診) |
証の決定 |
虚実・寒熱、陰陽五行の割り当て
四大病型(陽実証、陽虚証、陰虚証、陰実証)
基本証(肺虚証、脾虚証、肝虚証、腎虚証、肝実証) |
治療法則 |
難経六十九難、七十五難による五行選経、選穴
難経六十六難、六十七難、六十八難等による五兪穴、五要穴の選穴 |
手法 |
本治法…身体全身のバランスを整えることを目的に、四肢にある五兪穴、五要穴に接触程度の鍼
補法優先:陰経~陽経へ、衛気・営気の手法
脈診、腹診で脈の変化、腹の緊張を都度確認
標治法…局所の病症の改善を目的に、首肩背中部、腰仙部に鍼・灸
局所の硬結部位に衛気・営気・衛営転換手法
遠隔治療(遠道刺、巨刺)で営気・衛営転換手法
こり、硬結の弛みの確認 |
太極療法
陰と陽のバランスがとれた状態を“太極”といい、種々の原因により生体に生じた歪み(バランスの乱れ)を整え、調和した状態にする治療法です。
澤田流太極療法は、澤田健によって考案された、臓腑学説に基づく全体的把握を基本とし、五臓六腑の不調和を元に戻すことを主目的とします(丹田に元気をつける)。これにより枝葉の症状は消滅するとし、兪穴、募穴を多用します。治療はどの患者にも基本穴に施灸します。基本穴は身柱、脾兪、腎兪、次髎、曲池、左陽池、中脘、足三里、澤田流太渓(照海)、厥陰兪、補助穴は気海、肝兪とし、疾病に応じて取捨選択します。
一穴ずつの補瀉よりも刺激の総量が身体にあうかにポイントが置かれております。
黒野式生体制御療法(太極療法)は、東洋医学研究所黒野保三先生によって考案された、実証医学的に裏付けのある鍼治療方法で、統合的制御機構の活性化を行い、恒常性維持機構、生体防御機構、自然治癒機構の働きにより、生体バランスの乱れを修復します。症状に囚われることなく、「疾病の治療」のみならず、「未病治」「抗老化」が期待でき、あらゆる病態に対し応用することができます。
黒野式全身調整基本穴については、中脘、期門、天枢、気海、天柱、風池、大杼、肩井、肺兪、厥陰兪、脾兪、腎兪、大腸兪の13穴を太極療法としての全身調整基本穴と定めております。
当院では1寸鍼(長さ30mm太さ0.14mm)を用い、1~2mm程度刺入し、速抜する単刺術と呼ばれる手法で、全身調整を図ります。
長野式処置法
人間の体には本来、自然治癒力というものが備わっています。これを阻害するものがあると病気が発症してきます。この自然治癒力を妨げている要因を5つに分け、これを取り除くことによって治癒へと持っていきます。それが鍼灸の古典理論から西洋医学の解剖生理学に根拠をおき、臨床家であった長野潔が創り上げた治療法です。
この5つの要因とは、1.免疫系、2.血管系、3.神経・内分泌系、4.筋肉系、5.気系です。
長野式のもう1つの特徴は、“丸ごと治療”という考え方です。患者の病気だけを診るのではなく、患者そのものを診る。症状や病気がどのようにして起こったのか、その背景には何があったのか、患者を取り巻く家庭環境や職場・対人関係などを知っておくことは治療する上で、大変大事なことです。病気だけでなく、病人を治していくという事です。
1.治療する前に、診立て(所見)をします。
長野式では主に5つのポイントを診ていきます。
問診 |
何時から、どこが、どのようにあるのか。
今までどのような治療をしてきたのか。
既往症や手術・入院の有無、現在服用している薬。
飲食・便通・睡眠はどうか等。 |
脉診 |
脈状は今の体の状態や病状の経過、予後が最もわかる診断法です。
祖脉(浮沈遅数虚実)というのがあり、脉状の基礎になっています。 |
腹診 |
鍼灸の腹診は難経系が主流になっており、
臍を中心に肝・肺・心・腎・脾を診ていきます。 |
火穴診 |
火穴というのはその経絡の虚実がよく表われている反応点です。
五臓に重きを置きますから、特に陰経を診ていきます。
無論、陽経も診ます。 |
局所反応点 |
口蓋扁桃や頚部リンパ節に関係が深いのが天牖。
神経的な疲れが出て、ふらつきがある場合は陰陵泉。
筋緊張が簡便に判別できるのが胸鎖乳突筋。等 |
2.治療法
5つの阻害因子を正していく、実際の治療で運用していく処置法です。
免疫系処置
私たちの体は外敵(ウイルス、細菌等)から守る免疫機構がある。すなわち骨髄・白血球・扁桃・リンパ節・胸腺・粘膜下リンパ組織等であり、それらの機能を強化、活性化することによって治癒に導く処置。 |
扁桃処置
粘膜消炎処置
アレルギー処置 等 |
血管系処置
人は血液の循環がスムーズに保たれることで、健康を維持している面がある。しかしこの血流が滞ったり、虚血に陥ったりすると体の治癒力が低下して、体調が崩れてくる。この血液循環を促進する処置。 |
瘀血処置
肝門脈鬱血処置
骨盤虚血処置
骨盤鬱血処置
横V字処置 等 |
神経・内分泌系処置
人は自律神経や内分泌機能によって、体の全身調整が計られバランスが取れている。このバランスが乱れると病気に傾いていく。これら自律神経や内分泌の働きを調整する処置。 |
自律神経調整処置
副腎処置 等 |
筋肉系処置
筋肉や靭帯の強張り、硬化或は弛緩によって体の方々に痛み・しびれなどが出る。この歪みを正していく処置。 |
帯脈処置
筋緊張緩和処置
結合組織活性化処置 等 |
気系処置
鍼灸治療はそもそも、経穴を使って“気”の巡りを良くする治療である。とりわけ、気の流れを促進し、調整していく処置。 |
胃の気3点処置
気水穴処置 等 |